知らなきゃ良かった糖質制限ダイエット

知りたくないかもしれませんが… 糖質制限ダイエット、いわゆる炭水化物を抜くダイエットをすると、口 臭や体臭がキツくなることがあります。

これは2015年1月6日の夜、テレビ朝日の番組『中居正広のミになる図書館・知らなきゃ良かった 第6 弾』で放送されました。

口臭や体臭がキツくなる原因物質は『アセトン』という揮発性のあるガスです。アセト ンは、フルーツを腐らせた時のような甘酸っぱい特有のニオイを持っています。

このアセトンの量が多くなっている時に、口臭や体臭が強くなってしまうのです。これが『ダイエット臭』と呼 ばれるものです。 そして、このニオイが持続的に出ている場合は、自覚しづらいことがあるので注意が必要 です。

また、糖質制限ダイエットをしたところで、必ずしもダイエット臭が起きるわけではありません。そして、これは 糖質制限ダイエットに限った話でもありません。

ダイエット臭が起こる人と起こらない人との違いは何か。そこに大切なことが隠されているのです。 番組の中ではお話ししきれなかったことを、ここで詳しくお伝えしていこうと思います。難しい話をできるだけ シンプルに分かりやすくしましたので、構えることなく軽い気持ちで読んでいただければ幸いです。

 

ダイエットは食事が基本

「ダイエットって、何をすること?」

こう聞かれたら、なんと答えますか? 「やせること」や「減量すること」だと思っていませんか? ダイエットの本 来の意味は「やせること」ではないのです。

ダイエットという言葉の語源をたどってみると、ギリシア語にまでさかのぼることになります。元々は『生活様 式』という意味で、そこから『日常の食事』や『食事療法』という意味に転じた英語が ”diet” なのです。 英和辞典を開いて確認してみてください。このような意味だと書かれていますから。

ですから、ダイエットの話の中に運動のことが出てくることがよくありますが、本来は出番ではないのです。あ くまでも、ダイエットというのは食事の話ですから。少なくとも、高いお金を払ってジムで運動したり、エステに 通うことではないことを知っておいてください。運動することやエステに通うことは、友達に自慢できたりしやす い『趣味』や『娯楽』のひとつとして実践されれば良いと思います。運動によって筋肉を育ててボディメイク するにしても、栄養状態が良くないと効果が出にくいものです。ですから、『まずは食事』だということを理解 してください。

 

体重よりも体形を見よう

体重計のメーカーなどは「毎日測ることで現状を把握することが大切」といいます。数値化することで、客 観的な判断がしやすくなりますから悪いことではありません。

では、あなたはダイエットをして「どうなりたい」のですか?

ダイエットに成功すると、どんな嬉しいことが起きるのですか? そして、それはダイエットしないと起こらないこ となのですか? この問いに対して、体重を測る必要があるかを再確認してみましょう。それでもやはり体重 測定を必要とするのであれば、されれば良いと思います。 「スマートな身体になりたい」 「格好よくなりたい」 「ステキな人だと見られたい」

こういう望みなのであれば、 体重を測ることよりも、メジャーを使って身体のサイズを測った方が有意義 だと思います。スリーサイズに加えて、二の腕や太ももなどの気になる部分のサイズを記録してみてくださ い。

体重は言わなきゃ誰にも分かりませんが、体形は見れば分かります。もちろん、服装で隠すことはできま す。それで満足なのであれば、ダイエットはいらないのではないでしょうか。

そして「健康的な身体を手に入れたい」のであれば、体重を測っても仕方がありません。 日々の体調など を日記などに記録していく方が有意義な資料になることでしょう。

不健康なほどやつれてしまっていた人は、筋肉を取り戻すことで体重が増えることがあります。 体重にば かりこだわってしまうと、やつれてでも体重を減らすことを望んでしまう人がいます。ですから、体重よりも体 形にこだわってもらいたいのです、健康的でスマートな身体を手に入れるために。

体重は変わらなくても、ウエスト周りが引き締まってくる人もいます。これは脂肪が減って、筋肉が増えた 時に起こる現象です。同じ重さの筋肉と脂肪とを比較すると、体積比で約22%も違うからです。

ですから、病的に肥満な人でなければ、体重測定は意味がないことがよくあります。 体重を測りながら、 せっせとジムに通って運動していましたか。 もしかしたら、知らなきゃ良かったお話になってしまったかもしれ ませんね。

 

糖質制限によくある誤解

『糖質制限』という言葉は、2012年頃から爆発的に知れ渡った言葉です。『糖質』というのは、炭水化 物から食物繊維を差し引きしたもののことです。ブドウ糖や果糖、ショ糖(砂糖)やデンプンなどを指してい ます。1日の食事の中で白飯やパン、麺類などを摂る量をセーブしましょう、という言葉として広く知れ渡る ことになりました。

「糖質を減らした分、タンパク質や脂質を摂る量が増えることは問題ない」というポイントが忘れ去 られていることがあるので、ここのところが『糖質制限』という言葉の問題だとは思っています。誤解を招き やすい表現だからです。また、『制限』という言葉を聞くと条件反射的に反発したくなる人もいます。私もそ うです。ここでは、よく知られた言葉として代表的に使っていきます。

2014年6月下旬に行われた日経メディカルオンラインの調査では、回答した2,263人の医師の過半数 (58.3%)が『糖質制限』を支持しており、3人に1人が自ら実践しているということが分かりました。もち ろん、残り約4割の医師は反対意見を唱えています。

「長期的な効果や安全性に疑問がある」という論拠に対しては、カロリー摂取量(おもに脂質)を抑える 『カロリー制限』においても疑問が残されています。むしろ、それを実践した福岡県糟屋郡久山町での大 規模調査では、残念な結果が生まれてしまっています。この残念な結果のことは『久山町の悲劇』と呼 ばれています。

「タンパク質や脂質の摂取量が増える」という論拠については、何が問題になるのか分かりません。人間 の身体から水分を取り除くと、残りの約半分ずつがタンパク質と脂質です。身体の主要構成成分ですか ら、不足することこそ問題の種になります。

「筋肉が落ちてしまう」というのは、誤った糖質制限への理解によるものです。のちほど詳しく説明しますが 『貧食系糖質制限』を行ってしまうと、起きてしまうことがあります。これは糖質制限への理解を深めるこ とで、この誤解は晴れることでしょう。

「カロリー制限に比べて長続きしない」という話は、かなり眉ツバものです。通院患者数が減っていくから、 その病院でのデータとしては「減ってみえる」だけだったりします。なかなか改善されないために、転院してし まうなどの理由が挙げられます。主治医からすれば、認めたくない現実だとは思いますが仕方がないことで す。そして、日々の食事のつど、カロリー計算をする方が面倒くさく感じるのは私だけでしょうか。

 

食べ物でブレない身体に

『糖質制限』は、糖尿病治療のひとつとして広まったものです。つまり、すでに代謝に問題を起こしてしまっ ている人向けのものという考え方もできます。

ですから、代謝に問題がなくて、許容量の範囲内であれば問題にならないと考えます。この『許容量の範 囲内であれば』というのが、ハッキリと線引きしずらいのですがね。ただ、糖質を敵視するような考え方は、 ちょっと行き過ぎなのではないかと私は思っています。

敵視される食材として、よく挙げられるのが『卵』です。 「卵をたくさん食べると、コレステロールが上がるか ら、1日1個まで」 というもの。一度や二度は耳にしたことがあるかと思います。この話の元になったのは、 草食動物である「ウサギに卵を食べさせたら問題が起きた」というロシアでの実験報告です。この学説が今 でも語り継がれているというわけです。

ウサギにコレステロールを与えたら、大動脈にコレステロールが沈着して動脈硬化がおこりました。そこで『コ レステロールが動脈硬化の原因だ』と言いだしたのがロシア医学者のアニチコフなどでした。ウサギはコレス テロールを含まない植物を食べる草食動物です。そのためウサギにコレステロールを含むエサを与えると、 それがそのまま反映してコレステロール値は急上昇してしまいます。

一方人間は肉なども食べますから、食物から摂るコレステロール量に応じて体内でつくる量を増減し、コ レステロール値を一定に保つ仕組みができあがっています。ですからほとんどの人は食物からコレステロール をとっても、それですぐにコレステロール値が上がることはないのです。

そもそも、コレステロールは脂質の一種で、人をはじめ動物が生きていく上で必要不可決な栄養素 です。とかく悪者扱いされるコレステロールですが、細胞膜を作る上で大切な材料ですし、脂肪の消化に 必要な胆汁酸や、性ホルモンの原料になったりします。コレステロール値が低くなると血管が破れやすくな ったり、免疫力が低下するなどの弊害が生じます。鶏卵や魚卵に多く含まれ、赤ちゃん用の粉ミルクに は、わざわざコレステロールが加えられているほど大切なものなのです。

コレステロールは、人体では脳神経系、筋肉などに多く蓄えらており、体重70kgの成人男性の場合、約 140gのコレステロールが体内に存在するといわれています。身体の細胞の重要な構成成分ですから、これ くらいは必要になるのです。

そして、一日に必要な量のコレステロールのうち約80%が肝臓をはじめ体内でつくられています。食事 から摂る量が多くなると、自動的に体内合成量を減らして調節するような仕組みになってもいます。です から、食べ物のコレステロールを気にすることは枝葉を見て、幹を見ていないようなものなのです。

しかもコレステロール値が低いと精神的に不安定で暴力行為を起こしやすく、うつ状態にもなりやすいとい う話もあります。コレステロールが少ないと、心の不安をなくし希望をもたせる脳内物質「セロトニン」が少な くなって、その働きが妨害されるといわれています。

フィンランドのビルクネン博士の『コレステロールと犯罪』の研究によると、コレステロール値が低い人には殺 人、暴行などの犯罪者が多く、コレステロール値が高い人には詐欺、偽造など知能犯が多いという興味 深い結果がでています。

「隣の佐々木さん、卵をたくさん食べたからコレステロールが上がったってさ」 なんて話を聞くこともあるでしょう。実際に上がることがあります。ですが、この背景には『タンパク不足だっ たから、コレステロールが低い検査結果が出ていただけ』だったりします。 卵を少し増やしたくらいで振り 回されるような身体だった、ということです。

思い出して欲しいのですが、オムレツ1人前のレシピでは鶏卵を3つくらい使いますよね。 本当に問題があ るのであれば、オムレツのレシピに規制が入りそうなものです。

ここでひとつ衝撃的な論文を紹介しておきましょう。1991年にニューイングランドジャーナルに報告されたも のです。 15年間、毎日卵を25個摂取しているにもかかわらず血清コレステロール濃度が正常な88歳 老人と、高コレステロール食および低コレステロール食を摂取した健常成人のコレステロール吸収率と胆汁 酸合成量を比較した結果、88歳老人は健常成人よりもコレステロールの吸収率が低く、胆汁酸合成量 が多かったというものでした。

白ご飯やパン、麺などの『糖質』についても同じことがいえます。

少し食べたくらいで振り回されているうちは、まだ問題が残っているということです。そんなヤワな身体ではい けないのです。 ただ、必要以上に食べ過ぎることは良くありません。そして、その許容量が意外と少ない ことも忘れてはいけません。

日本を代表する料理といえば『日本料理』です。あるレベル以上のものであれば、意外と『ご飯』が少ない のです。 そして、腕のある料理人であればほとんど砂糖などを使わずに味を出すのです。 下手な和食とは 比較にならないのが、本来の『日本料理』だということも知っておくと良いでしょう。

治療中は『制限』もやむを得ないと思います。状態によっては、制限のレベルも変わってくることでしょう。 一方で、予防や美容目的でのダイエットならば、選択の幅が広くなってきます。自分の許容量を知って、その範囲内でたしなむようにすれば良いだけの話です。ここのところをゴチャ混ぜにしてしまうと、理解に苦し むことがあるでしょう。

 

太るもやせるも化学反応

「摂取カロリーが消費カロリーを上回ると太る」という面白い話をよく聞きます。 実際には、そんな簡単な 算数の問題ではないのです。

糖質やタンパク質は1グラムで4キロカロリーで、脂質は1グラムで9キロカロリーという話からして、実は机 上の空論です。 実験室の中で起きることと、身体の中で起きることは残念ながら違っているのです。

太っている状態というのは、余分な脂質や水分を身体の中に溜め込んだ状態だということは、ご存知だと 思います。 脂質や水分をうまく代謝させることができれば、ダイエットはうまくいくのです。

身体の中で脂質を作り出したり、水分を抱え込んでしまうのは『化学反応』によるものです。 脂質を摂り すぎたから、脂質を溜め込んでしまうわけではないのです。 水を飲みすぎたから、水分を溜め込んでしまう わけではないのです。

この身体の中で起こる化学反応について研究した学問が『生化学』という基礎医学になります。 基礎 医学である生化学を根拠に、教科書に書かれている内容の一部を簡単にお話ししていきます。 細かいと ころは割愛しますので、ポイントだけをザックリとつかんでみてください。

もし、内容に疑問があればまずは高校の生物や化学の教科書を見直してください。 それでも物足りない ようでしたら、生化学の教科書を紐解いてみてもらえば良いです。

 

ダイエット臭とケトン体

ダイエット臭の原因物質は『アセトン』であるという説明をしました。このアセトンがどのようにして作り出さ れるかをお話ししておきましょう。

耳慣れない言葉ですが、私たちは 『ケトン体』を日常的に第二のエネルギー源として利用しています。 生まれたての赤ちゃんでは、このケトン体をおもなエネルギー源として利用しているという報告もあります。 赤ちゃんに血液中には、成人の基準範囲をはるかに超えるケトン体があることが一般的であることが分か ってきたのです。

ケトン体は、体内の脂質のうち脂肪酸が代謝された時につくられます。この化学反応を『ベータ酸化』と いいます。 脂肪酸がベータ酸化されると、アセチル補酵素Aを経由して、ケトン体(βヒドロキシ酪酸、アセ ト酢酸)が作られるのです。

このうち、アセト酢酸からは容易に脱炭酸反応を起こして揮発性をもつ『アセトン』に変わります。いきなり 極端な糖質制限を行うと、このケトン体がうまく利用できずに血中濃度が高くなることがあります。その結 果として、呼気や尿にアセトンが排出されて、甘酸っぱいニオイを醸し出すことがあるのです。 このアセトン の臭いが、ときに「糖質制限をすると口臭や体臭が臭くなる」と言われる正体です。

アセトンは、身体が糖質制限状態に適応するにしたがい、何週間もせずに排出されなくなります。放って おけば、自然に消えてなくなるというわけです。とはいえ、会社勤めや、接客業務など、口臭や体臭が気 になっては困るケースもあるでしょう。 その場合は一時的にデオドラントで対応しても良いですし、あらかじ め準備をしてケトン体をうまく使えるような身体にしておくという手もあります。

 

独特のニオイを出す病気

ダイエット臭と同じように、フルーツを腐らせたような甘酸っぱい特有のアセトン臭がする病的な状態があり ます。 このアセトン臭が起きやすい状態として、日本口臭学会の資料によると以下のものが挙げられてい ます。

  1. 糖尿病 2. 飢餓状態

食事もしているし、糖尿病でもないのにアセトン臭が起きてしまうのはどうしてか。 それは『隠れ糖尿病』 の状態なのか『飢餓状態に近い』と考えてもらえば良いです。つまり、代謝がうまくできていないか、栄養 が十分に消化吸収できていないと考えられます。 知らずに続けていると、問題を大きくしてしまうことがある ので要注意です。

特に『隠れ糖尿病』だと、口が乾きやすくなったり、歯ぐきが弱って出血しやすくなっていたりしますから、 ア セトン臭だけでなく、硫化水素やメチルメルカプタンなどの腐敗臭も重なってしまい、よりキツい口臭になっ てしまうこともあります。

「ニオイが出るのは、体調不良のサイン」なのです。

食生活の切り替えについていけなくて、一時的に起きた問題なのであれば近いうちに落ち着くでしょう。も し、何週間も続いてしまうのであれば、我流になっていないか再確認してみることをお勧めします。それでも ダメなら、しかるべき医療機関で相談することも検討しておいてください。

 

根本を探れば、実は単純

代謝に問題があったり栄養不足の時にダイエット臭が起こりやすい、とお話ししました。ダイエット臭を予防 するためには、栄養不足にならないようにして代謝を高めることがポイントということです。

・ ビタミンB群 ・ 鉄分 ・ 亜鉛 ・ タンパク質

これらの栄養素が、代謝を高めるための大きなカギを握っています。まずは、ここを意識的に確保しましょ う。都合の良いことに、ビタミンB群や鉄分、亜鉛を多く含むものはタンパク質です。ですから、タンパク質を シッカリ食べることが重要になってきます。

鉄分や亜鉛などのミネラルは、身体の中ではタンパク質に包まれてキープされています。 ですから、タンパ ク質不足の状態ではミネラルをキープしておくことが難しくなるのです。

『タンパク質の摂りすぎ』を心配する人が時々います。意外と知られていないのですが、近年の日本人の タンパク質摂取量は戦後レベルにまで落ち込んでしまっているのです。摂りすぎの心配の前に、摂らな すぎの心配をすべき状況なのです。これに伴ってか、ビタミンB群の摂取量までも著しく低下しています。

また、身体の構成成分である脂質も避けないようにしましょう。脂質は身体にとっては能率の良いエネル ギー源です。そして、ビタミンA・D・E・Kなどの吸収をサポートする働きも持っているからです。

カロリーを気にしている人たちは、脂質を避ける傾向にあります。そこに落とし穴があるのです。 アブラは友 達です。悪者ではないのです。コレステロールも身体にとって大切なものです。

 

基礎医学をカジってみよう

ここで、基礎医学のひとつ『生化学』に基づいた話をしましょう。ですが、専門家を相手にしているわけで はないので、難しい話をするつもりはありません。ザックリとした大筋を話していきます。図をながめながら「そ ういうものなのか」と雰囲気をつかんでおいてもらえば十分です。教科書的ではないですが、今回はこの4 パターンに分けて解説していきます。

・ 草食系の代謝 ・ メタボ系の代謝 ・ 肉食系の代謝 ・ 貧食系の代謝

細かい部分は割愛していますので、詳しく調べたくなった方は生化学の分厚い教科書をひも解いてみてく ださい。

 

草食系の代謝

栄養状態にさほど問題を抱えていない健康的な一般人の場合です。

炭水化物のうち、食物繊維でない『糖質』はアミラーゼやマルターゼ、スクラーゼなどの糖分解酵素によっ て消化され、ブドウ糖(グルコース)や果糖(フルクトース)という単糖類の状態で腸から吸収されます。

吸収された糖は、おもに肝臓でピルビン酸やアセチル補酵素Aに代謝されて、TCA回路と呼ばれるエネ ルギー工場でビタミンB群や鉄を消費しながらエネルギーに変えられます。

脂肪分は、リパーゼや胆汁酸によって消化され、グリセロールと脂肪酸に分解されて腸から吸収されま す。そして、体内で再び結合して中性脂肪として予備のエネルギー源として保存されます。

実際はお互いに関与しあっていたりしますが、ザックリといえば『糖は糖、脂肪は脂肪』として代謝されて いると考えれば分かりやすいです。

 

メタボ系の代謝

ところが、ビタミンB群や鉄分が不足してくると様子が変わってきます。 TCA回路でのエネルギー産生が滞ってしまうので、行き場を失った糖が様々な物質に変わっていくので す。乳酸になったり、コレステロールになったり、グリセロールと脂肪酸から中性脂肪に変わってしまったりす るのです。

肝臓にどんどん中性脂肪がたまってきて、脂肪肝の状態になってしまったりするのです。脂肪肝の原因 のひとつが『過剰な炭水化物』といわれるのは、こういうメカニズムがあるからです。 「糖と脂が問題だ」といわれることがありますが、これらをうまく代謝できていないことこそが問題なのです。タ ンパク質やビタミン、ミネラルの不足が背景にあると考えた方が理解しやすいです。

 

肉食系の代謝

では、炭水化物を抑えた肉食系の人たちの代謝を見てみましょう。実際の食生活では炭水化物の摂取 をゼロにすることは現実的には難しいのですが、便宜的にゼロという状態で説明をします。

脂肪酸という第二のエネルギー源を『ベータ酸化』することで、アセチル補酵素Aを作り出してエネルギー を生み出します。同時に余ったグリセロール2分子を利用して、ブドウ糖(グルコース)をも生み出します。こ の化学反応を『糖新生』と呼んでいます。

また、身体に疲労物質・乳酸がたまっている場合は、ここからブドウ糖を作り出すこともできます。ブドウ糖 の需要が高まっていると、アラニンなどのアミノ酸からもブドウ糖をつくることもあります。

『糖新生』のキーワードで調べていくと分かりますが、『糖尿病』や『飢餓状態』というキーワードに遭遇 することがよくあります。これは、次に説明する『貧食系の代謝』の話なので、こことは状況が違っていること に注意が必要です。

 

貧食系の代謝

炭水化物や脂質を摂らず、ビタミンB群や鉄分も不足している状態がこちら。なにも食べていないような ものなので、飢餓状態に近いといえます。間違った糖質制限や下手なダイエットによくあるパターンです。

このような状態になると、必要なブドウ糖を作るために筋肉を壊し始めます。専門的には『タンパクの異化 が亢進する』という状態です。筋肉がやせて、やつれていきますから体重は減っていくことがあります。しか し、それは病的な体重減少だということはすでにお気づきだと思います。

 

まずは基礎をかためよう

『食』に関する情報というのは、非常にたくさんある上に玉石混淆になっています。 些細なことを取りあげ て問題視している情報も多くみられます。 特にセンセーショナルなタイトルが付けられているものほど、その 傾向が強いといえます。

特に『有害性』にばかり焦点をあてて、『量』の問題を無視して、あたかも『リスク』が高く聞こえる話があり ます。こういう話には注意が必要です。有害性がないことを証明することは、『悪魔の証明』とも呼ばれる ほど難しいものです。水ですら、「発がん性がないとは証明されていない」のですからね。

こういう情報を知っておくことは別に悪いことではないとは思います。しかし、その情報に縛られてしまって 『続けられない状態』に陥ってしまうのは困りものです。 自分の『習慣』として取り込めるレベルで、情報を 取捨選択した方が無難です。 そして、枝葉にとらわれて幹(基礎)の部分を忘れてしまっては、本末 転倒です。

私が伝えたいことは、とてもシンプルです。「必須栄養素を十分に確保しましょう」ということだけです。 そ うすることで、自然と代謝が本来の状態にまで高まります。その結果がダイエットの成功であり、健康につ ながるのです。必要な栄養素を十分に摂るだけですから、悪くなる理由がありません。

必須栄養素とは、どんなものがあるでしょうか。

・ 必須アミノ酸(タンパク質) ・ 必須脂肪酸(脂質) ・ ビタミン ・ ミネラル

糖質や食物繊維などの炭水化物は、必須栄養素ではありません。ですから、扱いとしては『調味料』や 『嗜好品』に近い感じです。このように考えを切り替えてしまうことがポイントでしょう。ご飯やパンなどのこと を『主食』と呼んでいた日本独特の文化の影響もあるのでしょう。主食とは、食事の中での主要なエネ ルギー供給源のことですから、必ずしも穀物を指す言葉ではありません。

そして、ビタミンやミネラルを確保するために、タンパク質や脂質を中心に食事をしましょう。中でも需要の 多いビタミンB群、鉄分、亜鉛を効率よく確保することができる食材はこちらになります。

・ 肉 ・ 卵 ・ チーズ

肉や卵で1日に350グラムほど食べたいところです。その中に含まれるタンパク質は約70グラム。 この程度 であれば「食べ過ぎ」とはいえませんので、心配はありません。 体重50キログラムで、ほどほどの運動量があ る人にとっては適切な量といわれるほどです。繰り返しますが、過去のデータが示すように現代日本人はタ ンパク質が不足気味になっているのです。

これらの食材を食べる際は、胃腸に負担をかけないためにもよく噛んで食べましょう。 1口を少なめにし て、30回噛むことを意識してください。ドロドロの状態にしてから飲み込みましょう。 消化も吸収も化学反 応です。大きなかたまりよりも、小さな粒子になっていた方が反応がスムーズに進みます。 まずは、よく噛 むことで物理的に小さな粒子にすることが大切なのです。

代謝に問題がないのであれば、炭水化物は『嗜好品』と考えておけばよいです。 ただし、ビタミンやミネラ ルを確保するために炭水化物が必要になることがあります。 レバーを食べられない人は、葉酸の確保が 難しくなってきます。 ですから、ビタミンCの確保を兼ねて『葉物野菜』を食卓に添えましょう。

肉や卵だけだと、赤・黄・茶色などの暖色系が中心になってしまいます。 そこにグリーンを添えて彩れば、 オシャレ感も出てきます。信号の三色が揃えばキレイに見えるのです。 そして、なによりも調理が簡単で すから長続きしやすいです。 『習慣にする』ためには、シンプルで煩わしくないものがベストだと思います。 「あなたの主食はなんですか?」 「私は肉や卵が主食です」

こう答えられるようになった頃には、ダイエット臭も起こらずに嬉しい結果が出ていることでしょう。 必須栄 養素を確保するために、肉や卵を主食にする。これで基礎をかためましょう。

 

サプリメントの真実

栄養素をシッカリと確保しましょうとお話しすると、よく聞かれるのがサプリメントのこと。結論からいえば「ま ず食事でベースを整える」ことが、やはり大切になります。

市販のサプリメントを愛用している人にとっては、知らなきゃ良かったと思うかもしれない話をひとつ。市販 のサプリメントの多くは『信頼できるものではない』というのが、現実なのです。

平成24年3月29日に東京都が発表した『平成23年度健康食品試買調査の結果』によると、都内の健 康食品売場やスポーツ用品店等で購入した72品目のうち60品目に不適切な表示や広告が認められ ました。そして、インターネット通信販売で購入した53品目については全部に不適切な表示や広告が認 められたという報告でした。

つまり、信頼できるサプリメントを一般人が見分けることは現実的には非常に難しいということを示唆して いるのです。

もし、効率化のためにサプリメントを利用するのであれば、不足する栄養素を事前に把握した上で、GM P基準に準拠した高品質なものを選択することをお勧めします。

 

栄養不足の意外な兆候

洗面台にある鏡でもよいですし、お化粧用の手鏡でもかまいません。それを使って、口の中にこのようなサ インがないかを確認してみてください。

・ 歯の根元が欠けてないか ・ 上顎や下顎に骨の隆起はないか ・ 歯の先端が削れていないか

これらのサインが見つかった場合、ビタミンB群や鉄分の不足が疑われます。 同時に、ダイエット臭以外 の口臭も起こりやすい状態に陥っている可能性があります。 自分ではよく分からないのであれば、家族や 恋人、友達などに確認してもらいましょう。お互いに比べてみるのも面白いかもしれません。

ムシ歯になりやすい、歯ぐきから出血しやすい、歯石が付きやすいなども背景に栄養失調が隠れている ことがよくあります。歯磨きの腕前だけでは説明できない状況を、私たちは頻繁に目撃しています。

 

食事が変われば体質も変わる

アメリカには ” We are what we eat.” ということわざがあります。「我々は食べたものでできている」という 意味です。私たちの今日ある身体は、昨日までに食べてきたものでできています。

そして未来の身体は、今日から食べるもので変えられます。ですから、食事が変われば体質も変わっ てくるのです。およそ7年の月日が経てば、全身の細胞が入れ替わってしまいます。生まれ変わるといって も過言ではないでしょう。

ここに挙げたのは、私の妻の血液検査データの推移です。2007年に東京の大学病院で大手術をしてか らのものです。2012年5月までは、横ばいかジリ貧といった推移をたどっているのが分かると思います。

その2012年夏ごろから必須栄養素をシッカリ摂ることを意識した食生活に切り替えたところ、妊娠中 だったにもかかわらずデータの改善が見られました。授乳期も栄養を失いがちなのですが、それも見事に乗 り越えた結果となりました。ひどい便秘からも解放され、とても喜んでいます。そして、心からこう思えるよう になったのです。 「食事のチカラはスゴい」 「体質って、変わるんだ」

 

健康診断を活用しよう

栄養素の過不足は、健康診断や人間ドックなどで得られる血液検査データを深読みすることで分かるこ とがあります。 ひとつひとつのデータを見て基準範囲に入っているかどうか、というレベルのものではありませ ん。特別な読み方をします。 複数のデータを照らし合わしていくので、生化学的な知識と総合判断力 が必要になります。

ちょっとした自覚症状があるのに、健康診断の結果はA判定で『問題なし』とされたことはありませんか。 自覚症状があるのに問題なしと言われることに違和感はありませんでしたか。

健康診断で行われている判定はスクリーニングといって『明らかな病気を見落とさない』ことを目的にして います。 ですから、A判定で問題なしというのは『明らかな病気がない』だけでしかないのです。

せっかく痛い思いをして採血して得られたデータなのですから、もっと活用したいとは思いませんか。 今はま だ少ないのですが、今後は血液検査データを深読みして活用できる歯科医院が増えていきます。

口の中の代謝は早いですから、歯ぐきや舌、頬の粘膜の状態とも照らし合わせれば、的確な判断がしや すいのです。 歯や骨の状態もエックス線から把握することもできます。そして、診察時間を長めに取れるの も歯科の特徴です。

『医食同源』という言葉をご存知でしょう。

『食の選択』は、とても大切なことです。 そして食の入口は『口』ですから、まず口の環境を整えることが重 要です。 このことに気づいた歯科医師や歯科衛生士が、少しずつ増えてきています。 ムシ歯や歯周病の 治療のためだけに、歯科医院を訪れるという時代は終わりを迎えようとしています。

『予防に勝る治療はない』 『知識格差が健康格差を招く』 この言葉を覚えておいてください。病気になってからでは遅いのです。自分の身体は、自分で守るしかあり ません。そのためにも『知識』を蓄えておくことをお勧めします。

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