若くて元気は毎日の「選択」でつくれる

現代人を老化させる5大原因

「16の老けない習慣」についてお話しする前に、まずあなたの身の回りに潜んでいる、現代人ならではの老化原因について知っておきましょう。その項目は、五つあります。いずれも、若々しく元気な体を維持するためには欠かすことができない大切な要素です。一つ目のホルモン分泌の変化は、体調不良だけでなくメンタルとも深く関わります。二つ目の化学物質は、私たちがいかに食べるものを「選ぶ」ことが大事かを再確認するためにも知っておきたい知識です。三つ目から五つ目の現代型栄養失調、糖質のとりすぎ、細胞の酸化は、まさに見た目の老化や糖尿病、がんなどの病気ともダイレクトにつながっていて、正しく知り、習慣を正していくことによって体を内側から大きく変化させることが可能です。

 

ホルモン分泌の変化

35歳以降になると、ホルモン分泌が変化しはじめ、老化を早める要因になります。女性の場合、更年期に向けた変化が現れます。これまでは肌をみずみずしく保ち、体型を維持し、血管をしなやかにキープしてくれていた女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下。だるさや肩こり、冷えなどの不調やうつうつ、イライラといった気持ちの不安定が起こりやすくなります。女性ホルモンと同時に男性ホルモンも低下するため、筋力が低下し、きりっとした姿勢を維持できなくなります。猫背になって、老け込んだ印象になる人も。男性ホルモンは意欲や判断力をつかさどっているため、好きだったものに興味が持てなくなったり、仕事の集中力や決断力が低下するといった自覚もあるかもしれません。女性ホルモンも、男性ホルモンも「DHEA」というホルモンを原料に作られますが、このDHEAはストレスの影響によっても分泌が低下します。

 

化学物質

空気中や土壌、口から入る食べ物、肌に触れるものなど、私たちは常に化学物質に取り囲まれて暮らしています。ダイオキシン、PCB(ポリ塩化ビフェニル)などの環境中から取り込む化学物質には発がん性があることがわかっています。また、穀物や野菜、果物、魚介類には土壌を通じて水銀やカドミウム、鉛、ヒ素といった有害金属が蓄積され、それを食べる人間の体にも微量ながらたまっていきます。化学物質や有害金属は、頭痛やめまい、アレルギー疾患や子どもの発育障害などとも関わりが深いと言われているもの。私たちの体にはこのような毒を排泄する力が備わっているものの、年齢とともにこの解毒力は低下します。

 

現代型栄養失調

いまの日本は、24時間、どこでも食べ物を買うことができる便利な社会です。けれども、とった食品が体内に入り、栄養素がきちんと全身のすみずみにめぐり、体を元気にしていると言いきれるでしょうか?私は、いま不調や老化に悩んでいる現代人のほとんどが「現代型栄養失調」、つまり本当に必要な栄養素を補えていない状態だと思っています。糖質が多い食事や、ファーストフード、インスタント食品など添加物を多く含む食品は、私たちの体をよけいに働かせ、消耗させます。ビタミンやミネラルは慢性的に不足している状態にあります。また、食物繊維や発酵食品をあまりとらないと、腸内環境が悪化し、体に必要のないものが長く蓄積し、その毒が全身の細胞を老化に導きます。ビタミンやミネラルの宝庫であるはずの野菜や果物の栄養素は、50年前と比較すると、8分の1から50分の1に落ちているという報告も。私たちが、若々しい体を維持するためには、ただ漫然と食事をとるだけでは不十分なのです。

 

糖質のとりすぎ

糖質は、私たちの体を動かすエネルギー源として不可欠なもの。しかし、現代では、この糖質を常にとりすぎている人が非常に多いのです。手軽にとることができるめん類やどんぶりものはもちろん、間食でチョコレートや菓子パンを食べるなど、一日中、糖質食にどっぷりとつかっている人が珍しくありません。糖質が体内でブドウ糖に分解されると血糖値が上がり、血糖値を下げるために膵臓からインスリンというホルモンが分泌されます。しかし、糖質の摂取量があまりに多いとインスリンが効きにくくなり、余った糖は脂肪として蓄積され、そんなに食べ過ぎている自覚はなくとも、ぽっちゃり体型になっていきます。また、余った糖が体内のタンパク質とくっついて「糖化」すると、肌が張りを失い、骨がもろくなり、血管は動脈硬化を引き起こしやすくなります。一度糖化した細胞は決して元には戻らず、全身の老化はどんどん進行していきます。

 

細胞の酸化

人が生きていくためには、酸素が欠かせません。私たちの体は、食物から取り込んだ糖質や脂質に、空気中から取り込んだ酸素を反応させてエネルギーをつくり出しています。このときに発生するのが「活性酸素」です。この活性酸素は、細胞を酸化させて傷つける、という性質が。そこで私たちの体には、活性酸素の毒性を消去する「SOD(スーパーオキサイドディスムターゼ)」などの抗酸化酵素が備わっています。いわば「サビ止め」のような働きをしてくれるこのような酵素の働きも、年齢とともにどんどん衰えていきます。また、働き盛りの年齢では、活性酸素を増やすような生活要因がプラスされ、酸化が加速しがち。お酒の飲み過ぎ、食べ過ぎ、ストレスなどはいずれも活性酸素をたくさん発生させます。また、前で説明した「糖化」は酸化ストレスを加速させ、さらなる糖化を生む、というふうに負の連鎖でつながりあっています。

 

必要なのは習慣を「選ぶ力」

ここまでお話しした「現代人を老化させる5大原因」について、あなたはどのような印象を持たれたでしょうか。年齢を重ねてきた結果、ホルモン分泌が変動期にさしかかっている。また、私たちが現代に生きるかぎり、大気中や日常生活、食べるものから有害なものが体内に入ってくる可能性が大きいということ。さらに、忙しいからといって簡単な食べ物だけですませることが、体をじわじわと老化させていることなどを、ご理解いただけたはずです。これまでは、日々の慌ただしい生活に流されて、食べるものも生活スタイルも「なんとなく」選んできた、という人が多いかもしれません。しかし、何らかの不調や、気になる老化のサインを実感しているなら、いまこそが生活習慣を変えるチャンスです。よく、「生まれ持った体質だから仕方がない」とか「親も中年期以降に太ったから」「親戚に糖尿病が多いから」などとあきらめてしまう人がいますが、あきらめてしまってはもったいない!最新のアンチエイジング医学で、生活習慣と遺伝子について研究された結果、遺伝子が決めるファクターは2~3割程度で、環境が決めるファクターのほうが7~8割程度、ということがわかってきました。つまり、生まれ持った遺伝子によってすべてが決まるわけではなく、生活環境を自分なりの努力でコントロールすることは、かなりあなたの人生にプラスの影響を及ぼすのです。漢方の世界でも、「先天の気」と「後天の気」という考え方があります。先天の気とは、その人が生まれながらに持っているエネルギーのこと。生まれた段階でその総量が決まっていて、年齢とともに減少しますが、「後天の気」は日々の暮らしの中で補うことができ、努力次第で蓄え、増やすことができると考えられています。あなたの老化のしやすさも、病気のかかりやすさも、これからのやりかた次第。あなた自身の行動によって変えられるのです。

 

自分が何を選んでいるかを知る

食べ物がいつでもどこでも、便利に手に入る。そんな生活は「口に入るものに対して鈍感」な人間をつくります。あなたは、飲み物や加工食品を買うときに、食品表示をチェックしていますか?あるいは、食べるときにきちんと食べ物を見て、よく味わい、香りも嗅ぎ、ていねいにいただいているでしょうか。お腹はすいていないけれど、時間が来たから適当にお腹に詰めこんでいる、忙しいからパソコン作業をしながら片手で食事をする、といった習慣がある人は、自らの「食べ方」そのものを見直してほしいと思います。私がアメリカでアンチエイジング医学を学んだときの恩師は、ユダヤ系のアメリカ人でした。彼が日本にやってきたときに和食レストランに一緒に行くと、「鱗があるものは食べるが、エビやかになどの甲殻類や貝類、イカやたこは食べられない。ウナギも食べない」と言って、驚いたことがあります。ユダヤ教では、食べ物に関する規定が「コーシャ(Kosher)」として定められています。食品だけでなく、薬やサプリメント、調味料など、体に入るものはすべてその範疇に入ります。食品を製造する会社や企業にユダヤ教の聖職者が赴いて原材料や製造過程を見学し、製品が「コーシャに適合する」と認定されると、印を製品につけることができます。海外では食品にコーシャの印がついたものがたくさん売られていて、健康に関心が高い人の間では「安心して食べられる食品の目安になる」と評価されています。考えてみれば、貝類やイカ、甲殻類などは、海のお掃除屋さん。彼らは海の底の有機物を食べて生きていますが、近年は土壌汚染が問題になっており、とりすぎはおすすめできない食材です。古くからの戒律とはいえ、彼らは現代の環境がそういった状況になることを予測していたのでは、と不思議に思うこともあります。ユダヤの戒律を実践しましょう、とは言いません。しかし、彼らのように、自らの口に入るものをまずはしっかりと選ぶという姿勢は、これから本記事でお話しする「老けない習慣」を実践するうえでの大前提にしてほしい知恵といえるでしょう。

 

人生のピークを長くする

自分は、一度限りの人生を生きている。言葉にすると、当たり前のように聞こえますが、人は病気になってはじめて、「もっと食事に気をつければよかった」「面倒がらずに検診を受けておけばよかった」と後悔するものです。心身ともに健康である状態を長く維持することは、簡単なことではありませんが、正しい知識をもとにこつこつと続ければ、十分に可能なことです。その重要な裏付けとなる研究結果が最近になって発表されました。世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究協会(AICR)が提案する、がんを予防するためのライフスタイルの実践度合いと死亡率を調べた研究です。研究対象は、欧米各国の25歳から70歳の約38万人の男女でした。がん予防のためのライフスタイルは、「植物由来の食品を中心にとる(野菜や果物、豆類と精製度の低い穀物を食べる)」「体重管理をする(BMIは18・5~25の範囲内に)」「身体運動の習慣を持続させる」「アルコール類の摂取は極力避ける」「食品添加物、保存料、残留農薬の摂取を避ける」「調理温度はできるだけ低い温度にする」「焦げた肉類を食べない」「喫煙しない」など、すべてを実践するのは難しいな、と私自身も感じるような厳しい指針です。しかし、13年にわたる研究の結果、守られているライフスタイルが多いほど、男女ともに死亡率が最大で34%も低下することがわかったのです。健康のお手本となる生活習慣を一つでも実行することが死亡率を下げ、病気の予防につながる、ということがこのような大規模な調査によってわかった、ということは、本記事でおすすめする習慣の〝信頼度〟をさらに上げるものだと私は感じています。お酒も甘いものも、控えたほうがいい。でも、「わかっちゃいるけどやめられない」。運動は面倒だからしたくない──外来でもよく耳にする言葉です。しかし、体に悪い習慣は、人生のピークを必ず、短くします。

 

ズボラでも続けられるアンチエイジング生活

ここまでお話ししたように、若さと健康のためには、生活習慣を変えることが必要です。そうはいっても、厳しすぎるルールはストレスになります。「すっきり引き締まった体型になるために、今日から甘いものは一切とらないぞ!」このような決意をする人は多いのですが、「絶対に○○しない」というような取り決めは、100%といっていいくらい、挫折してしまうのです。「甘いものを食べない」と、「禁止」する意識が強いほど、本能は「甘いもの」のことばかり考えるようになり、最終的にはどか食いしてリバウンド、という経験をした人も少なくないはずです。また、今日から毎日ジョギングをする、と決めてしまうと、仕事がきつくて疲れ切っている翌朝も、走らなければいけなくなります。元気になるための健康法が、自分を苦しめるストレスになる。そんなことは本末転倒でしょう。禁止だらけの健康法はナンセンス。それよりも、できることから、少しずつやってみよう、そんな気持ちで本記事の習慣に取り組んでみてください。やろうと思っても、なかなかできないことは、できなくてもいい。それが私のモットーです。無理をしない、焦らない、マイペースで。そんなフレーズを心の中につぶやきながら、やってみたいな、と思うことから取り組んでみてください。食事はおいしく楽しみながら、そして、人生もたっぷりと楽しみながら、日々、元気でいられるよう生活を工夫してみる。トライアンドエラーで、いろいろなものに取り組んでみると、「これをやっていると、なんだか調子がいい!」と実感できることが一つか二つ、見つかってきます。それこそが、あなたに合っている健康法といえるでしょう。

 

無理は禁物。長続きする方法を探す

本記事でこれから紹介する「16の習慣」はゆっくりペースで続けてください。栄養で言うなら、今日何かを食べることで明日がらっと体調が変わるわけではありません。食事法も運動も、何か新たな働きかけをしてその結果が出るまでは、2~3週間かかるもの。だからこそ、何か一つ始めたらとりあえず2~3週間続けてみることを自らに約束してください。もちろん、「どうしてもこれは無理!」と思うものはスルーして、次のものに取り組んでOKです。食事、運動、睡眠、心。四つの角度からアプローチを続けると、3カ月後には「私、変わったかも!」とうれしい実感があるはずです。

 

ここまでわかる?世界の最新検査

現時点でのあなた自身の体の状態や危険因子について知りたいときに役立つのが、抗加齢医学の概念に基づいて行われる「アンチエイジングドック」です。一般的な人間ドックでは、病気の有無を調べることを主眼とします。異常値が見つかった場合は、薬による治療が始まります。一方、アンチエイジングドックの検査では一般的な人間ドックの検査項目に加え、ビタミン、性ホルモンや成長ホルモンの過不足、有害金属の蓄積の有無などを合わせて調べます。これらの項目は、日常生活での元気さを維持するためには欠かすことができない情報。注意点が見つかれば、サプリメントなどによって補正し、体のコンディションを最善に保つことによって「病気になりにくい体」をつくります。検査の世界も今、めざましく発展しています。たった数滴の血液からコレステロールや遺伝子分析まで数百という検査を提供可能にする米国のTheranos社も話題に。自分の体を能動的に知ろうとする人にとって、喜ぶべき時代が訪れようとしています。

 

老けない食事

「頭」で食べずに「お腹」で食べる

第1の習慣は、「頭で食べずにお腹で食べる」ということ。食べることは、毎日欠かせない行為だからこそ、長年のうちになんとなく積み重ねてきた習慣をなかなか変えられないものです。でも、いま、本当にお腹がすいているのかな?このぐらい食べないと、本当に満足ができないのかな?こんなふうに、自らに問いかけてみましょう。それが、理屈にしばられずに「お腹で食べる」ということ。体としっかり対話するための最初のステップとなります。

 

「空腹」が若返りスイッチをオンにする

ちょっとお腹がすいた……かな?と思った時点で、すぐにキョロキョロと口にするものを探して、それが何かを意識することもなく口に入れていませんか。じつはこのようなクセは大問題です。常に何かを口にして、お腹を消化のために使っている状態では、カロリーのとりすぎで脂肪がたまるばかりでなく、体内の老化も進めてしまいます。まずは、お腹がぐうっと鳴るくらい、しっかりと空腹を感じることにトライしてみましょう。空腹を感じることにはメリットがたくさんある、ということが最新の研究によって明らかになってきました。●長寿遺伝子のスイッチが入る空腹でいる時間がある程度続くと、長寿遺伝子「サーチュイン」が活性化します。サーチュイン遺伝子は、人が飢餓感を感じたときに活動を始め、老化やがんの原因となる、活性酸素の害から私たちの細胞を守ってくれます。●細胞内のゴミの回収作業が進む代謝のプロセスで生まれる細胞内のゴミを処理する「オートファジー」という働きが体内で高まります。これにより、年齢とともに発症リスクが高まる、がんや加齢性白内障などのリスクを下げる効果も期待できます。●成長ホルモンの分泌がアップ成長ホルモンも空腹によって分泌アップします。成長ホルモンは、傷んだ肌や筋肉、骨など全身を修復し、脂肪の燃焼を促し、免疫力を高めます。空腹感は長生きスイッチをONにする。空腹時以外の食事は老化を進める。

 

日本人女性はやせすぎで老ける

あなたはいま、ちょっと増えてしまった体重をはかりながら「とにかく体重を減らさなきゃ!」と、食べる量を減らすダイエットをしようとしていないでしょうか。やみくもにやせようとすると、老化は確実に加速してしまいます。2014年に発表された、国民健康・栄養調査(厚生労働省)によると、女性で「やせ」の人の割合は、12・3%。つまり8人に1人が「やせ」で、これは1980年以降最も多くなったことが発表されました。女性のやせ志向はわが国では深刻で、ホルモンバランスを崩したり、高齢者の場合は低栄養になるおそれがあるとして厚労省も「しっかり食事をとり、適度な運動を」と呼びかけています。やせて栄養状態が悪い人は、疲れやすく、常にイライラするようになり、記憶力も低下します。骨粗しょう症リスク、不妊リスクも増します。さらにそのリスクは次の世代にもおよびます。やせて栄養状態が悪い母親から産まれる子は出生時の体重が低くなる傾向があります。低体重児は、将来的に糖尿病にかかるなど生活習慣病リスクを抱えます。食事を減らすことによって体重を落とすと、同時に、体を若々しく保つために必須の「筋肉量」まで落ちてしまいます。筋肉が減ると基礎代謝量が低下し、「食べてもエネルギーを燃焼しにくく、リバウンドしやすい体」になってしまいます。また、最近になり、筋肉は、運動ホルモンである「アイリシン(irisin)」の産生を高め、このアイリシンは乳がんの予防と治療に役立つ可能性がある、という研究も報告されています[1](188引用文献参照)。食事を減らして体重を落とすのではなく、筋肉を増やして体を活動的にするほうが、はるかに若々しさへの近道となるのです。行き過ぎた食事制限ダイエットでは脳も骨もやせていく。食事を減らすよりも筋肉を増やすべし。

 

「規則正しく」食べなくていい

「1日3食、朝昼晩と規則的に食べなければならない」。その思い込みは、40歳以降は捨てていきましょう。もちろん、規則正しく食べることは良いことですが、食欲がないのに食べたり、「夕飯を食べてないから」と寝る前に食べたりはしなくていい、と私は考えます。また、朝は一日元気に体を動かすためにしっかり食べる、夜も豪華に何品も並べてがっつり食べなくては、という考えもありますが、「老化予防」を中心にとらえると、そのとりかたも少し工夫が必要になってきます。まず、朝は「排泄」の時間。午前中は食べることよりも、「出すこと=排泄」を大事にしたいのです。眠っている間に、私たちの体は全身のすみずみの細胞の修復を行っています。朝はその結果、内側から出てきた老廃物をしっかりと排出することが先決です。朝は、おかゆに漬け物、野菜のみそ汁や果物などで軽めにすませ、内臓に過剰な負担をかけずに、すっきり排泄することに重きをおきましょう。いっぽう、夜は「吸収」の時間帯です。夜の食事はボリュームいっぱいになりがちですが、夜の糖質は「体の蓄え」になりやすく、また、夜間の成長ホルモンの分泌を抑えてしまうので、できるだけとらないほうが懸命。特に、ご飯やパンなどの主食はごく軽めにするといいでしょう。そのかわり、日中は消化機能が万全に働いているので、昼食はしっかりと、好きなものを食べてOKです。ただし、揚げ物やサラダ油を使った炒め物はなるべく避けて、野菜やタンパク質をしっかりとるよう意識するといいでしょう。「時間が来たら食べる」習慣をやめる。時間よりも「空腹感」に合わせて食べる。

 

たまの「マイルド断食」で体リセット

食事を1週間単位でとらえてみましょう。最近、飲み会が続いて体重が増えている。前日に食べ過ぎたから、朝、食欲がない。そんなときは「食事どきだから」と無理して食べずに、消化器を休ませるチャンスだと割り切り、朝ご飯は野菜や果物だけにします。すると、消化器を休ませ、気持ちよく体の調整をすることができます。体の調整として、私がおすすめしているのが「マイルド断食」です。ニンジン1本、トマト1個、レタスかキャベツ3枚、あればほうれんそう2分の1束をミキサーにかけて、休みの日の朝・昼・晩に、食事代わりに1杯ずつ飲むのです。リンゴ1個、あるいはレモン汁1個分を足すと飲みやすくなります。野菜ジュースだけでは物足りないときは、消化のよいおかゆやスープを少量とるなど、無理のない範囲で行ってみましょう。ただし、水だけしかとらないような極端な断食を自己流で行うのは危険です。特にやせ型の人などは、いきなり食事を抜いてしまうと、代謝が落ちてしまい、具合が悪くなったり、むくみが出るようなことがあります。このような本格的な断食は、回復食が難しいのも注意点です。食事を何日もとらないと、消化器は休まりますが、休んだぶんだけ腸管の壁が薄くなり、いきなりどか食いをすると消化器を傷めてしまう危険も。だからこそ、自分で行うなら「マイルド断食」が安全です。一日を通して空腹感をしっかり感じると、体がリセットされて排泄機能も高まります。老廃物や毒を出し切ることによって体が軽くなり、やる気が出たり、肌がみずみずしくなった、などうれしい実感も得られるでしょう。「お腹が重い」「食べ過ぎが続いている」なら、マイルド断食。丸一日の空腹感で、消化器リセット→排泄機能がアップ!

 

調理温度が高い料理を避ける

第2の習慣は、料理の温度に目を向けるということ。天ぷらやフライなどの揚げ物、バーベキューでこんがりと焼けた肉、香ばしく焼き上がったパン、クッキー。「こんがりしたもの」は、どれもおいしいものです。しかし、焦げたものは「AGEs(終末糖化産物)」を多く含み、体内に吸収されて老化の原因になることが報告されています。また、甘いものなど糖質のとりすぎも、体内のタンパク質と結びついてAGEsという老化物質をつくる原因になることがわかってきました。料理をするときには、「この食材は、焦がさなくてもおいしく食べられるのでは?」と、一瞬振り返ってみることが大切です。

 

「焼き色」「焦げ」は最強の老化促進物質

食パンや唐揚げ、あめ色のタマネギなど、タンパク質と糖質を含む食材を加熱すると褐色になりますが、このとき発生する「AGEs」という物質が、強力に老化を進めることが世界の研究によってわかってきました。「AGEs」とは、「AdvancedGlycationEndProducts=終末糖化産物」という意味。終末糖化産物、という名前からわかるように、一度つくられてしまったAGEsは決して元通りにはなりません。AGEsは、私たちの体の中で、食事としてとった糖がタンパク質のアミノ酸に反応してつくられます。まず最初に「糖化」が起こり、そこから進行してAGEsがつくられます。肌の弾力であるコラーゲンが糖化すると、肌は張りを失い、シミやシワ、くすみが生じやすくなります。また、血管で糖化が起これば動脈硬化に、骨で起これば骨がもろくなる、というふうに糖化は全身の老化を進めます。「糖化」は、体内で起こる反応と、外からとってしまう「糖化した食べ物」という二つのルートで体を老化させます。私たちが日常でとる食べ物にはかなりの割合で、AGEsが含まれているので、注意が必要です。また、食品中のAGEsは、たとえば生肉と揚げた肉で比較すると、10倍近くも増えることがわかっています。「焼く・炒める・揚げる」よりも「ゆでる・煮る・蒸す」がはるかに調理温度は低いもの。高温調理したものはおいしいものですが、たくさんとらないよう気をつけて、低温調理をメインにするよう心がけましょう。コラーゲンを壊す揚げ物、焼き物を食べ続けると顔はたるみ、骨はスカスカ、血管も固くなる。

 

「焦げ」ががんや認知症の原因に

糖とタンパク質が結びついてできるAGEsは、日本人の死因ナンバー1である、がんとも関わります。そのメカニズムをお話ししましょう。私たちの体内にあるタンパク質は、分解と合成による新陳代謝を繰り返しています。分解されたタンパク質が、体内で同じように合成できるのは、遺伝子の核にあるDNAに、タンパク質のもとである「設計図」が記憶されているから。このとき、設計図のコピーミスが起こるとがん細胞が生まれます。コピーミスは、活性酸素やウイルス、発がん物質などによって起こることがわかっています。じつは誰の体内でも、毎日5000~6000個ほどのがん細胞が生まれています。それでも、がん細胞の多くは体が備え持つ免疫機能によって除去されます。免疫機能とは別に、がん増殖を抑える遺伝子も私たちは持っています。しかし、糖を過剰にとると、その糖とがん抑制遺伝子が武器として使う酵素とがくっつき、AGEsが発生します。すると、遺伝子のがんを抑える力が一気にダウンしてしまい、がん細胞の増殖を許してしまうことになってしまいます。また、AGEsは脳の老化が引き起こす認知症の原因の一つ、「アルツハイマー病」との関連も注目されています。アルツハイマー病の患者さんの脳では、βアミロイドというタンパク質が脳の神経細胞の周囲に沈着し、「老人斑」と呼ばれるものができますが、この老人斑には大量のAGEsが含まれています。糖化という現象が脳にまで影響を及ぼすのです。あなたがいまよりももっと高齢になったときに、予期せぬ病気にかからないためにも、便利に食べられるから、おいしいから、といった理由で「糖化」したものをせっせと食べることは避けるべきでしょう。体の「焦げ」はがん細胞に打ち勝つ力を抑えてしまう。認知症の人の脳にもAGEsがたくさん見つかっている。

「白い主食」とさようなら

第3の習慣は、食いしん坊さんにはちょっとつらい白ご飯、白パンとの決別です。炊きたて白ご飯のいい匂い、ふわふわの白パン、大好きな人も多いはずですが、老化を防ぐにはこのような「白い主食」を食べる頻度、あるいは量をぐっと減らすことが非常に効果的です。白い主食中心の糖質過多な食事を続けると、体内で「糖化」が進みやすいだけでなく、代謝が乱れて糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病のリスクも大に。アンチエイジングのためには、一日の糖質摂取は150~200gを目安にします。白米であれば茶碗1杯で55g。間食やおかずのイモ類、調味料にも糖質は入っているため、一日に茶碗2杯とおかずで150gほどの糖質量となります。このようなマイルドな糖質制限は、ダイエットが成功しやすい方法としても注目されています。

 

カロリー制限よりも効く、糖質制限

これまでの栄養学は、食事からとる「総カロリー」を重視してきました。しかし、糖尿病治療に携わる臨床医が、日本糖尿病学会の指針とは異なる「糖質制限食」を推奨することによって「糖尿病が改善する」ということを明らかにしています。この研究では、主食は1食あたりご飯3分の1から半膳、または6枚切り食パン半分~1枚に抑える。おかずからはイモ類を抜き、満足するまでおかずを食べていい、という食事ルールを、2型糖尿病の24人の男女の患者に実践してもらいました。この方法では1食あたりの糖質量が20~40g、1日あたり合計130g以下に。健康な人よりも、ちょっと厳しめのルールです。このような糖質制限食を実践した結果、6カ月後、カロリー制限をしたグループよりも、糖尿病の指標であるヘモグロビンA1cと中性脂肪が減少しました[2]。カロリー制限と糖質制限のどこがどう違うの?と思うでしょうか。その違いについて、ご説明しましょう。摂取カロリーは、3大栄養素である糖質、脂質、タンパク質から計算されます。しかし、カロリー制限では、これらの栄養素の摂取を全体的に少なくすることで、摂取する総カロリーを抑える食事です。糖質制限食とは、3大栄養素の中で糖質の摂取量を制限する食事であり、脂質とタンパク質の摂取量についてはこだわらないものを指します。糖質摂取量を制限することのメリットは、食後の血糖値を抑制することによって、老化を進めるホルモンであるインスリンの分泌量を減らすところにあります。つまり、老化を防ぎ、健康でいるためには糖質制限こそ大切なのです。糖質過多は老化ホルモン「インスリン」の分泌を増やす。老化予防には糖質制限が早道。

 

白米と玄米、老けないのはどっち?

糖質をコントロールするときに、まずおさえておきたいポイントが「量」です。だいたいご飯茶碗1杯、にぎりこぶし1個分が糖質50gほど、とイメージすると、ふだん食べるものの糖質がどのぐらいかが把握しやすいはずです。座りっぱなしで運動不足の人は、1日あたり150g、活動的に動き回っている人は200gほどを目安にするのが、アンチエイジングのための糖質制限量となります。ここで提示しているのは、適度に主食もとりながら、無理なくすすめられる糖質制限です。一切の糖質をとらない厳しい糖質制限を自己流でやると、ふらふらする、冷や汗が出る、などの低血糖を引き起こすおそれがあります。厳しい糖質制限を行う場合は、必ず専門家のアドバイスのもとに行うことが大切です。さて、もう一つのポイントは、「GI値(GlycemicIndex)」です。同じ糖質を含む食品でも、食物繊維の含有量などによって血糖値の上がり方には差があります。血糖値の上がり方をわかりやすい指標にしたものがGI値で、ブドウ糖のGI値を100として比較し、数値で示します。ご飯でいうと、白ご飯(精白米)のGIは88であるのに対して、玄米は55、と大きな差があります。食パンが90であるのに対して全粒粉パン、ライ麦パンは60。つまり、精製されていない主食は血糖値が上昇しにくいのです。白米や食パンは、カロリーはあるものの体内で役立つ栄養素が少ないために「エンプティ・カロリー」と言われています。また、玄米は白ご飯に比べてしっかりかむ必要があり、かむことによって満腹感が高まるので量を控えめにしても満足できるのがメリットです。とはいえ、玄米は、表皮ごと食べるものなので、不要な化学物質を取り込まないために、無農薬で作られたものを選ぶべきであるのは言うまでもありません。〝白米〟、〝白いパンだけ〟ではビタミン&ミネラル不足に。栄養を補う食べものを必ずプラス。

 

白い主食でビタミン不足に。脚気は現代病?

世界中で米や小麦が主食とされてきたのは、もともとは人が健康に生きていくために必要な栄養素をほとんど含む、完全食に近い食べ物だったからではないでしょうか。たとえば玄米は水につけておくと芽が出てくるように、強い生命力を持っています。生物として必要なビタミンやミネラル、微量成分までをほぼ完全に含むホールフーズ(全体食)といえます。玄米の栄養素は、白米と糖質量はほぼ同じですが、ビタミンB1は5・1倍、ビタミンB2は2倍、カルシウムは1・8倍、鉄は2・6倍、マグネシウムは4・76倍、亜鉛は1・28倍、とビタミンやミネラル量ははるかに多いのです。古い話ですが、江戸時代の大名は、参勤交代で江戸に登ると病気になることが多く、当時それを「江戸患い」と呼んでいました。この江戸患いの正体は、「脚気」という病気。江戸では白米食が普及していたために、ビタミンB群が不足し、脚気になってしまったのです。脚気はビタミンB1が不足するために起こる病気で、全身の倦怠感、食欲不振、足のむくみやしびれなどが起こります。江戸から昭和初期までは多くの死亡者を出した病気ですが、現代ではほとんどなくなっているといわれます。しかし、清涼飲料水や甘いものを多くとる人は、過剰な量の糖質を体内に常に取り込んでいます。糖質を分解するにはビタミンB1が不可欠ですが、糖質が多すぎるとこのビタミンB1が欠乏状態に。いま、全身がだるい、むくむ、といった不調に悩んでいる人は「隠れ脚気」かもしれません。玄米には、ビタミンB1をはじめ、鉄、マグネシウム、亜鉛など、不足しがちなビタミンやミネラルが豊富。体のベースを整えるためにぜひ食べたい主食です。糖質のとりすぎは「元気ビタミン」のB1を消費する!全身のだるさは「現代版・脚気」のサインかも?

 

主食を減らすかわりにタンパク質を増やす

糖質が体を動かすエネルギー源、いわばガソリンのようなものだとすれば、体を構成する材料になるのが、タンパク質。血液や筋肉などの体をつくる主要な成分であるとともに、体内の代謝をつかさどる酵素やホルモンなどの材料にもなります。体内にあるタンパク質は、常に入れ替わっています。タンパク質が壊れて、新たなタンパク質がつくられる日数は体の組織ごとに決まっていて、皮膚はおよそ28日周期、酸素を運ぶ赤血球はおよそ120日周期で入れ替わります。しかし、つくる作業が遅れると、壊れる作業のほうが進んでしまい、どんどん質が落ちていきます。肌の張りがなくなる、爪がもろくなる、髪の毛がぱさつく、といった自覚があれば、タンパク質不足かもしれません。肌の調子が悪いと、高価な化粧品で対処する女性は多いと思いますが、美肌のために優先すべきは、肌の材料であるタンパク質を積極的に体内に入れることです。目には見えない内臓や脳も、常に新しい細胞と入れ替わりを繰り返しています。全身の老化を食い止めるためにも、タンパク質は必須。年齢を重ねるごとに、「つくる」働きのほうが落ちていくので、若い頃よりもずっと意識してとる必要があります。では、どんな食材からタンパク質をとるか。私は魚と鶏肉を基本にし、豚や牛などの四つ足動物のお肉はパーティーフードにしましょう、とすすめています。豚や牛の肉は、腸内細菌によって発がん性物質になる、という報告も。たまにとるぐらいがバランスがよいと思います。魚の良さについては「第5の習慣」(70)でお話ししましょう。手軽に食べられる卵も、体に必要なアミノ酸がすべてそろった、すぐれた「全体食」です。特におすすめなのが、半熟卵。熱が入りきっておらず、消化・吸収しやすい形でタンパク質をとることができます。ちなみに、卵がコレステロール値を上げると信じている方が多いようですが、これは誤った情報です。新しい細胞の材料「タンパク質」がないと、新しい肌、新しい髪、新しい内臓がつくられない!

 

リスクは同じ!?「甘いお菓子」「甘くないお菓子」

ショートケーキやチョコレートなどのお菓子は、その甘みから糖質が多いということがわかりやすいもの。ならば、せんべいやポテチなどは砂糖が入っていないから低糖質?と思ってしまうかもしれません。しかし、イラストを見てもわかるように、間食によく登場するものの糖質量は同じくらい。むしろ、どんどん食べてしまい、気がついたら袋がからっぽになってしまう「しょっぱいおやつ」のほうが危険かもしれません。また、常に甘いものや清涼飲料水など糖を欲してしまうことを欧米では「SugarCraving」といいます。Cravingとは「渇望」という意味。一日を通して甘いものを口にしないと落ち着かない、というのは、とても健康的とはいえません。三時のおやつ、というふうにちょっとしたリフレッシュやなごみのためのおやつの時間を否定するつもりはありません。でも、15分おきに甘いものが欲しくて落ち着かない、といったときには、スルメを食べるのがおすすめ。スルメの白い部分は「タウリン」というアミノ酸で、疲労を回復する作用もあります。また、私は朝のコーヒーにココナッツオイルを混ぜて飲んでいます。脂肪はお腹の持ちがよく、満腹感を高めてくれます。すばやくエネルギーになりやすい中鎖脂肪酸を含んでいるのも、ココナッツオイルのメリットです(92)。チョコレートよりせんべいのほうが高糖質!「甘くないから大丈夫」という意識は捨てる。

 

三つの若返り成分「鉄・ビタミンD・ビタミンB群」を毎日とる

第4の習慣は、老化を防ぐために欠かせない、けれども日常の食事ではとりきれない三つの栄養素、「鉄」「ビタミンD」「ビタミンB群」を意識すること。まず、「鉄」は、私たちの全細胞のエネルギーのもとをつくる大切なミネラル。不足すると、とたんに冷えや肌の老化に結びつきます。さらに、「ビタミンD」は、甲状腺ホルモンや女性ホルモンと同じように、細胞の中に入り込んで全身の健康を高める、注目のビタミン。骨や筋肉の若さ維持のために、しっかりとる必要があります。また、甘いものが好きな人、疲れやすい人は、糖を代謝するときに消費される「ビタミンB群」をたっぷりめに補う必要があります。これらの三つの栄養素を意識した食材選びを心掛けると、体調がぐんぐん良くなることを実感できるでしょう。

 

細胞エネルギーのカギ「鉄分」

女性にとって大事なミネラル、という意識はあっても、なかなか補いきれないのが「鉄分」です。鉄の本当の働きを知るために、まずは「ミトコンドリア」という言葉を覚えてください。ここからは、ちょっとミクロの世界を探険しましょう。細胞の中には、エネルギー産生工場である「ミトコンドリア」があり、ミトコンドリアではATP(アデノシン三リン酸)という物質がつくられます。全身のすべての細胞は、ATPをエネルギー源として使います。体温をつくったり、代謝したり、体が成長できるのもすべてATPがあってこそ。鉄は、このミトコンドリアでATPをつくりだすときに欠かせない酵素に含まれているのです。たとえば過度なダイエットや、肉や魚をほとんどとらない食生活によって鉄が不足すると、とたんにATPがつくられなくなり、細胞のエネルギーが不足して全身にあらゆる不調が起きます。熱をつくるパワーが低下するので、低体温や冷え症に。また、肌のシミを予防する酵素も鉄によって働くので、鉄が不足するとシミができやすくなります。コラーゲンの合成にも鉄は欠かせないので、コラーゲンが不足し、シワやたるみに悩まされることも。免疫力が落ちて、風邪を引きやすく、治りにくくなることも鉄不足の症状の一つ。このように、鉄不足は老化と密接につながるのです。鉄分を豊富に含む食材を意識してとりましょう。卵は特に卵黄部分に鉄が豊富です。肉や魚は赤身になるほど鉄の量が多くなり、レバーや内臓は鉄のかたまりといえます。野菜なら、大根葉や小松菜、ほうれんそう。なお、動物性食品と植物性食品では鉄の吸収率がかなり違います。動物性食品に含まれる「ヘム鉄」は植物性食品の「非ヘム鉄」より吸収が数倍高いので、レバーのほうが効率的な鉄摂取源といえます。鉄は細胞のエネルギーの材料として、欠かせないミネラル。鉄をとるなら、青菜よりレバーのほうが効率的。

 

ホルモンと同等に活躍する「ビタミンD」

「現代人にはビタミンDが不足している」[3]と米国で報告されてから8年が経過しましたが、残念なことに日本ではビタミンDの重要性が知られていません。ビタミンDは、「ホルモン」と言っていいくらい、全身の細胞に影響を与える成分です。しかも「骨を強くする」「免疫力を高める」「うつ病を予防する」「認知症を予防」「筋力低下を予防する」など、老化というキーワードとつながるさまざまな研究成果が発表されている、いま、世界的に注目されている成分なのです。ビタミンDは、細胞内の「核」に直接作用する力を持っています。数々の栄養成分が血中を流れていますが、これらの成分が細胞内に入るためには「受容体」という関所を通過しないといけません。しかし、ビタミンDは細胞膜の関所のチェックを受けることなく入り込み、核に作用することができる成分。このような性質を持っているのは、ビタミンD以外には、副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモン、女性ホルモンのエストロゲンなど、限られたものしかありません。鉄が細胞内のミトコンドリアのエネルギーになるのと同じように、ビタミンDもまた、細胞内の働きに作用しています。そのため、どのぐらい体内に存在するかで、全身すべての細胞の若々しさに大きな違いが出てくるといえます。食品でいえば、サケや青魚には、体が必要とするビタミンD3が豊富に含まれます。干しシイタケがビタミンD補給になる、といわれていますが、シイタケに含まれるのはビタミンD2で、人が必要とするD3とは性質が異なります。また、ビタミンDはカルシウムの吸収の際にも必要で、いくらカルシウムをとっても、ビタミンDがないと腸管から吸収されません。そういった視点で考えると、小魚はカルシウムもビタミンDも含むアンチエイジングのためのオールインワン食材といえるでしょう。ビタミンDは、直接、細胞核に働きかける一種の「ホルモン」。世界のアンチエイジング関係者から注目される抗老化栄養素!

 

エネルギー代謝に必須「ビタミンB群」

疲れがたまって家ではゴロゴロしてしまう。がんばりたいのに、ここぞというときにパワーが出ない……。肌荒れや口内炎ができやすい。そんな人は、ビタミンB群をもっととるべきです。ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ビオチンの8種類を「ビタミンB群」といいます。それぞれが協力し合って働くので、食材、あるいはサプリメントであれば「ビタミンB群コンプレックス」──複合の形でとることが大事です。ビタミンB群は、糖質、脂質、タンパク質という3大栄養素を、エネルギーに変えるときに欠かせない成分。いわばガソリンに着火する役割を果たすので、ガソリンにあたる3大栄養素をとっても、ビタミンB群が不足するとエネルギーを生み出すことができず、疲れがなかなか回復しなくなったり、細胞の修復機能がダウンして、肌荒れや口内炎が治りにくくなったりするのです。なかでも注目が、ビタミンB12です。古くから、神経系の機能回復に効果があることが知られていましたが、最新の研究で、このビタミンB12の不足によって脳細胞の萎縮が進むことがわかってきました。脳梗塞を起こした107名の男女の血液中のビタミンB12濃度を調べ、2年後にMRI画像をとると、B12濃度が低い患者は脳の病変が起こるリスクが3倍も高かったのです[4]。このように、元気度アップ、肌や粘膜の維持、さらには脳の健康にも威力を発揮するビタミンB群は、日々しっかりとりたいもの。豚肉、玄米、牛乳、卵、ほうれんそう、タマネギ、のりやカツオなどの食材に、豊富に含まれています。糖質、脂質、タンパク質がエネルギーになるときの「火付け役」。疲れにくさ、肌や脳の健康維持に威力を発揮する。

魚を1日1回、必ず食べる

第5の習慣は、毎日魚を食べることです。あなたは、魚が好きですか?どんな魚を食べることが多いでしょうか。サンマやブリ、イワシなどの青魚はあまり食べない……そんな人は、ぜひ今日から、魚をとる回数を増やしていきましょう。若返りを意識するなら、ぜひとりたいのがEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)といった魚の油をたっぷり含む、青魚です。EPAとDHAは、私たちの血管と神経を若々しく保つ働きがあることがわかり、その健康効果が世界の注目を浴びています。体内ではほとんどつくることができない「必須脂肪酸」だからこそ、毎日意識してとり続けることによって、10年先のあなたの血管と脳を若々しくしてくれます。

 

魚の油が脳に効く

40歳以降は「魚にしようか、肉にしようか」と迷ったとき、魚を選ぶ回数を増やすほうが、若さを維持するための賢い選択といえるでしょう。魚の油に豊富に含まれる脂肪酸、EPAとDHAは、いずれも優れたアンチエイジング成分です。EPAの働きが世界的に注目されたのは、1982年に「野菜をほとんどとらず、アザラシの肉を主食としているイヌイットが、牛肉や豚肉など肉食中心のデンマーク人よりも心筋梗塞で亡くなる率が低いのは、血液中に含まれるEPAがきわめて多いためである」[5]という疫学調査が発表されたことがきっかけでした。イヌイットの人たちがとっていたEPAは、アザラシなどが主食とする青魚に由来し、血液中の脂肪酸の組成にも大きな差がありました。EPAは血液をさらさらにし、血栓をつくりにくくする脂肪酸です。中性脂肪も減らし、動脈硬化を起こしにくくします。いっぽうDHAは、人体の脳や目の網膜などの神経系に存在する脂肪酸です。DHAは脳にある「血液脳関門」というバリアを通過して脳に到達し、脳の神経伝達のやりとりをスムーズに。高齢者の認知機能を高める、子どもの知能レベルを向上させる、うつ症状を予防するなどの働きが注目されています。EPAは血管をしなやかにして血液をさらさらに。DHAは脳に到達して神経の働きをスムーズにする。

 

魚油はどんな魚に多い?

EPAやDHAの効果を得るための目安量は、EPAとDHAを合わせて1日あたり1g以上の摂取が目安となります。海外でも魚油の健康効果は知られていて、米食品医薬品局(FDA)も、EPAとDHAを1日最大3g摂取することを推奨。ドラッグストアで「Fishoil」のサプリメントが売られています。魚の種類によって、EPAとDHAの含有量には大きな差があります。油をたっぷりと含むのはブリ、サンマ、マイワシ、太刀魚、鮭、マアジなど。鮭やその卵のイクラにはEPAやDHAのほかにも、抗酸化作用がある色素・アスタキサンチンも含まれているので、アンチエイジングにはおすすめといえます。たとえばEPAとDHAを1gとるには、ブリ、サンマ、マイワシ、鮭ともに30~40gほど。手のひらにのる切り身一切れを目安にするといいでしょう。注意したいのは、マグロなど大型の魚には水銀などの有害金属の蓄積が心配されること。日常的に食べるのであれば、豆アジやシラス、イワシなど、頭からしっぽまで丸ごと食べられる魚をより積極的に選びたいものです。丸ごと食べれば、小骨に含まれるカルシウムや血合いの鉄分もとることができます。「国民栄養調査」によると、2006年以降、国民1人あたりの魚介類と肉類の摂取量が逆転し、魚離れが進んでいます。魚をしっかり食べて、コンスタントに全身の細胞と神経にくまなくEPAとDHAを送り届けましょう。EPAとDHAの理想量は青魚の切り身一切れを目安に。小魚を丸ごととればカルシウムや鉄分もとれる。

 

魚油はアレルギーを抑制。インスリンの効きを良くし、太りにくい体に!

魚油の働きとして、ぜひ覚えていただきたいのが「体内の炎症を抑える」という働きです。忙しい人は、市販のお総菜でおなじみの揚げ物や炒め物を食べることが多いかもしれませんが、これらに使用されるサラダ油には「リノール酸」という脂肪酸が豊富。このリノール酸は体内で「アラキドン酸」をつくります。このアラキドン酸は、体内で増えすぎると、免疫細胞が働きにくくなり、アトピー性皮膚炎やぜんそく、動脈硬化のリスクを高めてしまいます。しかし、魚油の中でも特にEPAには、このアラキドン酸と拮抗して体内の炎症を抑える働きがあり、アラキドン酸の弊害を打ち消してくれるのです。かつて日本人の食生活では、1日に最低1食は魚をとっていた。反対に、魚の摂取が減ったことによりアレルギー疾患が増えたのではないか、とも考えられます。実際に、アトピー性皮膚炎の患者23人を2グループに分け、片方のグループが1日あたりEPA1・8gをカプセルで摂取し、摂取しないグループと比較したところ、12週間後にEPAをとったグループは、かゆみやかさつきといった疾患のスコアが有意に低下しました[6]。また、魚油にはインスリンの感受性を高めて糖尿病に罹りにくくする働きも。47人の肥満男性(平均年齢46・5歳)の血液中のEPAおよびDHAの濃度を調べたところ、EPA、DHAの濃度が高かったグループは、インスリンの感受性が高く、空腹時インスリン濃度が低く、血圧も低く、炎症の指標となるCRP濃度も低いことがわかりました[7]。インスリンは糖を脂肪として蓄積する働きを持っているため、しっかりインスリンが効く体になるということは、過剰なインスリンの分泌を抑え、スリムな体型を維持することにもつながります。魚油はアレルギー症状を軽くする!糖尿病の気になる数値も改善。

毎日発酵食品を。納豆、みそ、ぬか漬けを常備する

第6の習慣として実践したいのが、「毎日発酵食品をとること」。納豆やみそ、ぬか漬けやヨーグルトなどの中から、「今日はどれか一つでも食べたかな?」と振り返る習慣をつくりましょう。特に女性の味方である大豆には、大豆イソフラボンをはじめ、大豆タンパク、大豆レシチンなどさまざまな健康成分が豊富。ただし、大豆はあまり消化吸収率が良くないため、栄養素をしっかり体内で役立てるには、みそや納豆など「発酵した」ものをとることがおすすめです。また、日本人が昔から食べてきたぬか漬けは、乳酸菌に加え、食物繊維もいっしょにとることができる優れた食品です。腸の環境は、気分にも精神状態と影響をあらわします。元気な腸のキープが「ストレスに強い心づくり」にも役立つのです。

 

みそ、納豆が脳に効く

和食が優れているポイントの一つは、発酵食品をふんだんにとることができること。みそやしょうゆ、納豆、そして鰹節も発酵食品です。発酵食の中でも、日本女性の味方といえるのがみそや納豆でしょう。その材料となる大豆には、更年期症状を緩和して肌や血管の老化を抑える大豆イソフラボンや、内臓脂肪の蓄積を抑える大豆タンパクがたっぷり。日本人の乳がん罹患率や、女性の更年期症状の程度が欧米に比べて低いのは、女性ホルモンのエストロゲンのように働く大豆イソフラボンの効果ではないかともいわれています。また、注目したいのが、脳への効果。大豆の脂質に含まれる「大豆レシチン」は、体内に吸収されると、脳の情報伝達を行う神経細胞の大切な材料に。年齢とともに低下する記憶力や学習能力を改善する働き、つまり脳を若々しく維持する効果があります。大豆が「ブレインフード」といわれるのは、このためです。このように優れたアンチエイジング食品である大豆ですが、消化・吸収はそれほどよくありません。しかし、発酵させたみそや納豆であれば、タンパク質が分解されたり、大豆イソフラボンの糖の一部が外れるなどして、より吸収されやすい形になっています。さらに、納豆に含まれるタンパク質分解酵素「ナットウキナーゼ」には、血栓の主成分であるフィブリンを溶かし、血栓を作りにくくする働きが。また、納豆菌は胃酸で死滅しきらず腸まで届き、善玉菌の敵である活性酸素を消去したり、善玉菌のエサを作り出すなど、腸内環境をせっせと整えてくれるのです。若々しさを意識するなら、ぜひ毎日食べたい健康食、納豆。私も毎日、ランチのときに納豆を1パック食べています。大豆レシチンは記憶力や学習能力を改善する。吸収率が高いのは、みそや納豆など「発酵」した大豆。

 

喜びもやる気も腸からやってくる

納豆が腸内環境を整える、というお話をしましたが、私たちが研究しているアンチエイジング医学の中で、現在最もホットな話題の一つであるのが、「腸内環境」です。腸は最大の消化器官であるだけでなく、病気や炎症とたたかう「免疫力」をつかさどる臓器です。さらに、腸は「第二の脳」といわれるくらい多くの神経細胞が分布し、私たちの気分や精神状態にまで影響をもたらしている、ということがわかっていました。慢性的に腸の調子が悪い人は、メンタルにおいても不安を抱えることが多い、ということは経験的に知られていました。また、下痢や便秘、お腹の張りなどの症状が起こる過敏性腸症候群の人の8割が、不安とうつに悩まされます。その詳細を調べた研究があります。健康な女性のグループ12人に1日28回、4週間にわたって善玉菌を含むプロバイオティクス飲料を飲んでもらい、別の女性のグループには牛乳を同じように飲んでもらいました。実験の前後に、恐れや怒りを感じている人の写真を見せながら脳スキャンを行ったところ、プロバイオティクスを摂取したグループは、恐れを感じる顔に対しての反応が減少した、つまり脳ストレスに対して強くなってきた、という結論が導かれました[8]。精神の安定をつかさどる神経伝達物質「セロトニン」の95%は腸内細菌によってつくられる、また、腸では脳と同じ程度、およそ40種類の神経伝達物質が合成されている、など、感情は腸から生み出されているのではないかと思えるほど。わが国でも、古くから「あの人が腹がすわっている」「腹をくくる」といった表現があります。また、英語で「消化管」を意味する「gut」は、「勇気・根性」まさに〝ガッツ〟を意味するのは興味深いことです。腸は第二の脳。セロトニンのほとんどは腸内細菌がつくる。腸が不調になると、うつにつながる!

 

便秘は老化を加速させる

全身のアンチエイジングに関わる腸内環境は、できるかぎり、いい状態をキープしたいもの。健康な腸が機能していれば、食べたものは16時間以内に排泄されるのが正常なリズムです。1日に1回はバナナ状のお通じがあるなら、その状態を続けられるよう意識しましょう。しかし、年齢とともに腸も老化します。40代を過ぎると、幼い頃には多かった善玉のビフィズス菌が減り、悪玉のウェルシュ菌が増え始めます。便を押し出す腹圧が低下して、大腸のぜん動運動が減って便を出しにくくなったり、生活リズムが乱れると、腸の動きもとたんに乱れます。腸内環境の乱れを自分で知るサインは「口臭」の変化。便秘になると老廃物が大腸から血液中に再吸収され、呼気から排泄されるためです。また、お腹がガスっぽくなって張ったり、おならや便のにおいが強くなると要注意。腸内細菌叢がバランスを崩し、悪玉菌が増えているサインといえます。便秘を放っておくと、大腸内に長く便が停滞します。すると、便に含まれる発がん性物質と腸の粘膜が長時間接触することによって、大腸がんリスクが高くなります。また、外に出すべき老廃物が滞ることによって、全身の代謝が低下し太りやすくなったり、肌荒れなどの皮膚トラブルが長引くことにもつながります。便秘予防にぜひ欠かさず心掛けたいのが、善玉菌を含む発酵食と、善玉菌のえさとなる食物繊維を同時にとること。和食につきもののぬか漬けには、乳酸菌と食物繊維が同時に含まれるので、すぐれた発酵食といえます。ヨーグルトには食物繊維が入っていないので、ドライフルーツや、りんごやバナナなどのフルーツといっしょにとるとよいでしょう。腸内環境の乱れのサインは「口臭」や「便のにおい」の変化。発酵食をとるときには食物繊維をセットでとる。

油に気をつかう

第7の習慣は、油はいいものだけを口にするということ。ココナッツオイル、アマニ油、いろいろな油が話題になっていますがいったいどの油が「いい油」で、どの油が控えるべき「悪い油」か、頭が混乱してしまっていませんか?実は、「油」についての考え方は、いま大きな転換期を迎えています。かつて「悪者」とされ、控えるべきとされたバターやラードなどの動物性脂肪よりも、サラダ油などに多く含まれるリノール酸のほうが体に炎症を起こすなど、悪さをすることが明らかになってきたのです。知らないうちに、体調を悪化させる油をとりすぎていないでしょうか。いまこそしっかり油の情報の交通整理をして、日々、体にいい働きをする油を選ぶ力を身につけましょう。

 

悪い油は、今日からやめる

植物性油と動物性油、どちらが健康にいい油か?と聞かれたら、多くの人は「植物性油」と答えるでしょう。1950年代以降、大豆油などサラダ油の大量生産技術が進み、「リノール酸」は体にいい!という一大キャンペーンが行われました。マーガリンが普及し、サラダ油がお中元商品として人気を呼びました。しかし、最新の研究によって、悪いとされてきた動物性油よりも、サラダ油に代表されるリノール酸のほうが問題だということが明らかに。76でもお話ししたように、リノール酸は体内で代謝されてアラキドン酸になると炎症を起こします。もちろんアラキドン酸は人体で必要な成分ですが、現代人では「足りていない人は、まずいない」というほど、とりすぎの状態です。炎症とは、いわば毒虫に刺されたときに「腫れる」「赤くなる」「痛む」「熱を持つ」、このようなことが全身あちこちで起こることを意味します。炎症が起こる臓器によって、肝炎、腎炎、関節炎、動脈硬化など病名は変わります。また、細胞の遺伝子が傷付けば発がんにつながることも。リノール酸による炎症が進めば、老化や病気が起こりやすくなるのは明らかです。この火消し役をするのが、EPAやDHAなどの「n―3系」の油。ところが、現代人は洋食中心となり、n―6系とn―3系の摂取比率が5:1ほどになっています。例えるなら、5人の放火魔に1人の消防士が対峙しているような状態。これ以上の炎症を抑えるには、悪い油を今日からできるかぎり避けていくことが必須です。植物性のサラダ油のとりすぎに注意!動物性油のほうが適している場合も。

 

加工食品に潜む「植物油脂」に注意

「トランス脂肪酸」は絶対に避けたい油。トランス脂肪酸は、自然界に1~2%はあるとされる、ごく少量存在する油で、通常の脂肪酸と構造が異なるのが特徴です。そもそも脂質には、エネルギー源としてだけでなく、細胞膜をつくり、細胞の形や柔軟性を決めるという大切な役割があります。しかし、この人工的な脂肪酸であるトランス脂肪酸は体内に入っても有効に利用されないどころか、細胞膜の変形などの原因になり、発がん性もあることが指摘されています。西欧諸国では、トランス脂肪酸に対する規制の強化が行われ、デンマークでは2003年から重量比で2%以上トランス脂肪酸を含む油脂は販売できなくなっています。ところが、日本ではトランス脂肪酸の規制もなく、表示義務もなく、完全に出遅れた状態なので、自らの目で賢く選ぶしかありません。トランス脂肪酸は、精製植物油(天ぷら油、サラダ油)、マーガリン、ショートニング、市販の食パンや菓子パンやお菓子、チョコレートやアイスクリームにも含まれていることが多いので、注意が必要です。ファーストフードのフレンチフライやフライドチキン、お総菜のコロッケやフライなども同様です。原材料表がある場合は、「マーガリン」「ファットスプレッド」「ショートニング」「植物油脂」「植物性油脂」と書かれているものには高濃度のトランス脂肪酸が含まれている可能性があるので注意が必要です。トランス脂肪酸は細胞膜の変形を引き起こす!市販のお菓子に高濃度で含有されている可能性も。

 

ココナッツオイルが脳細胞の福音に!

ここ最近、話題のココナッツオイルは、肉の脂やバターと同じで室温で固まりやすい「飽和脂肪酸」の仲間ですが、ラードなどの長鎖脂肪酸と異なり、中鎖脂肪酸を豊富に含み、独特の働きを持っている油です。長鎖脂肪酸は、リンパ管から静脈、脂肪組織、筋肉、肝臓へとゆっくり体内をめぐりますが、ココナッツオイルの中鎖脂肪酸は、腸管から吸収されるとそのまま肝臓に運ばれ、効率よく分解されてエネルギーとなります。つまり、燃えやすく、脂肪として蓄積されにくい脂なのです。また、ココナッツオイルは肝臓で代謝されて「ケトン体」という物質に変化します。ケトン体は脳に運ばれ、神経細胞のエネルギー源として利用されます。わが国でも有数の認知症外来がある相模原中央病院で、ココナッツオイルを服用し、認知スコアがどう変化するかを確かめたところ、「ココナッツオイルは認知症治療に有効」ということが確認されました(グラフ)。市販されているココナッツオイルには品質の差があるため、表示をチェックしましょう。オイルを抽出する際に高温になりすぎると、有害なトランス脂肪酸が混入してしまいます。「低温抽出(コールドプレス)」あるいは「非加熱抽出」で「エクストラ・ヴァージン・ココナッツオイル」と表示されているものを選びましょう。ココナッツオイルは加熱しても酸化しにくいため、調理に使うことができます。素早くエネルギーになるので、燃えやすく、太りにくい。脳の働きを良くし、認知症を改善する報告も。

 

悪いものは追い出す

第8の習慣は、体に悪いものをできる限り避ける、ということ。では、いったい何が体に悪いのでしょう。「体に悪さをするもの」を見分けるヒントは、食べるものを手にとって、「これは、もともと自然界に存在していたものだろうか」とイメージしてみることです。前述したマーガリンは肉や魚に含まれる脂質とは異なり、化学的に合成されたものです。また、文明の発達によって人間がつくり出した環境汚染の産物である「水銀」「カドミウム」「鉛」「ヒ素」といった4大重金属にも注意が必要です。人間の体は、自然界に存在するもの以外を代謝できるつくりにはなっていません。健やかな体を維持し、老化を防ぐには、このようなものを極力とらないよう心掛けること、それが自分の体に対する責任でしょう。

 

重金属は体内にじわじわと蓄積する

水俣病は、私たちが決して忘れてはならない、重金属が原因で起こった悲劇です。1950年代の環境意識が乏しかった時代の出来事とはいえ、沿岸の化学工場から排出された有機水銀が熊本県の水俣湾に流れ込み、その海の魚を食べた人たちの脳や神経系が侵される、という重篤な健康被害をもたらした事件でした。水俣病のように高濃度ではないとはいえ、現代人の体内では同じような状況が進んでいます。水銀、鉛、ヒ素、カドミウムを「4大重金属」(表)といいますが、この四つの金属は、人がふだんの生活で接しやすいことからどうしても影響を受けやすいのです。呼吸を通じて取り込んでいたり、雨を通じて土壌や河川、海を汚染するので野菜や果物、魚介類を介して人間の体内にも有害金属がたまっていきます。体内にたまった重金属は体内のあちこちで炎症を起こし、疲労感、アレルギー、肌荒れ、頭痛、筋肉や関節の痛み、しびれなどさまざまな不調となって現れます。なかでも水銀は体内に入ると血液脳関門を通過し、脳細胞を萎縮させることが確認されています。水銀はマグロやカジキなど大型の魚介類をよく食べる人に蓄積が見られます。小型や中型の魚をえさにする食物連鎖の上位に位置する大型魚は、「生物濃縮」といって、環境汚染物質を体内に取り込みやすいのです。また、喫煙や排気ガスなどからはカドミウムが、ヘアダイ(染髪剤)からは鉛、農薬からはヒ素、と、日常にはさまざまな重金属が潜んでいます。重金属はひそかに体内にたまる猛毒!水銀が含まれる大型魚は食べる量と頻度を減らす。

 

知っておくべき、口に入れてはいけない食べ物

自然からかけはなれた物質は、身近でなじみ深い食べ物にもたくさん隠れています。たとえば、ドーナッツなどは、私からすれば「成人病リスクの三重奏」とも言うべき食べ物です。精製した砂糖を使っている、揚げ油がトランス脂肪酸である、さらに高温調理によってトランス脂肪酸が増し、「糖化」する……。なんとなく口当たりがいいから、という理由で気軽に食べ続けることで、全身の炎症を進めてしまっていないか、何かを口に入れる前には「これは何からできているんだろう」「どんなふうに調理されたのだろう」と考えてみてほしいのです。また、「カロリーゼロ」と表示された人工甘味料を「ダイエットに良さそうだから」と気軽に飲むことも避けてほしいと思います。近年、発表された論文では、人工甘味料が血液疾患のリスクを高める可能性が示唆されています。この研究は米国ハーバード大学で行われたもので、22年以上にわたってデータを解析した結果、「男性で1日1杯以上の人工甘味料入りドリンクを飲む人は、飲まない人に比べて、リンパ腫と多発性骨髄腫を発症する率が上昇する傾向が見られた」と報告されました[9]。ただ、人の体はこのような有害物質が入り込んでも、ある程度なら自分の力で解毒・排出することができます。体に悪さをするものを外側から入れないよう努めること。そして、たとえ毒素が蓄積されてもスムーズに排出する。そのためにも、腸が常に健康であるよう、腸内環境を整えることもしっかり意識したいですね。便利な食品を買う前に「何からできているか」考える。便利と引き換えに「健康」が目減りする!

 

「毛髪分析」で有害金属の蓄積がわかる

体内に入った有害物質は、6~8割は便から、2割は尿から、その他、汗や髪の毛、爪から排出されます。この仕組みを利用して、髪の毛を手がかりに体内に取り込まれた重金属を調べるのが、アンチエイジングドックで行う「毛髪分析」です。毛髪は、血中成分の排泄物で構成されています。代謝の影響を受けやすい血液や、食事内容が反映されやすい尿による検査よりも、より正確に有害金属の蓄積を見ることができるのが特徴です。当院の毛髪分析では、17種類の有害金属と、22種類の必要金属の濃度を調べることができます。有害金属は、水銀、カドミウム、鉛、ヒ素、アルミニウム、ニッケルなど。無農薬ではない玄米を食べ続けていた人からヒ素が、また、化粧の濃い人からニッケルが検出されることもあります。いっぽう、必要金属の分布を調べることで、亜鉛、クロム、コバルトといったアンチエイジングに欠かすことができない金属が十分とれているかどうかの判断もすることができます。

 

老けない運動

おしゃべりしながらのんびり走る

第9の習慣は、「のんびりペースで走る」こと。あなたはふだん、走る機会はありますか?ここ数日を振り返って、たっぷり汗をかいた記憶はあるでしょうか。人類が走る、という意味について根源から考えたベストセラー本『BORNTORUN走るために生まれた』(クリストファー・マクドゥーガル著)には「老化したから走れないのではない、走らないから老化するのだ」という印象的なフレーズがあり体を動かすことの大切さを考えさせられます。「運動」は、食事やメンタルヘルスと同様、アンチエイジングの基本の三本柱の大切な一要素ですが、近年の研究によって、「おしゃべりしながら、笑いながらできる」レベルの運動でも十分にアンチエイジングに役立つことが明らかになっています。さあ、あなたも今日からのんびりと体を動かしましょう。

 

脳細胞が増える、脂肪が燃えるスローステップ&スロージョギング

30代半ばを過ぎるころから、じっとしていてもエネルギーを燃焼させる「基礎代謝力」は低下しはじめます。女性ホルモンの分泌が低下することによって筋力低下が加速し、腰回りやお腹回りにも脂肪がつきはじめます。自分で意識しないかぎり、筋肉は衰える一方。この段階で行うべきは、筋肉の減少に歯止めをかけるために、「運動をすること」です。40歳以降の年代で最も効果を上げるのは福岡大学の田中宏暁先生が提唱する「スローステップ運動」。高低差20cmほどの台(フィットネス専用)を用意して、リズミカルに上り下りを繰り返すシンプルな動きです。1秒間に1ステップのペースで、10分間を目安に行いましょう。音楽を聴いたりテレビを見ながらでもOK。慣れてきたら、「スロージョギング」にも挑戦。1歩につき10cm進むぐらいの歩幅を細かく速く刻みながら、笑顔でおしゃべりできるぐらいのペースで走ります。かかとではなく足指の付け根で着地すると、ひざの故障を防ぐことができます。楽ちんで続けやすい有酸素運動でありながら、素晴らしい効果を発揮します。まず、記憶をつかさどる脳の「海馬」や意思決定をする「前頭前野」の脳細胞に働きかけ、細胞の数を増やします。また、脂肪の燃焼を促進し、ダイエットにも効果的。同じ5キロをウォーキングするよりもエネルギー消費量が2倍も高くなることがわかっています(グラフ)。運動嫌いでも続けられるスローな運動。脳細胞の増加、エネルギー消費アップに効果大!

第10の習慣は、「筋トレ」のススメ。筋トレというと、それだけで拒否反応を起こしていませんか?肉体派の男性がダンベルを持って厳しい表情で黙々と行う……。こんなふうに「つらい」「きつい」というイメージを抱いている人が多いでしょう。でも、筋トレは笑いながらできる強度、つまり「最大負荷の50%程度」のレベルでも、十分に効果を発揮します。「最大負荷の50%」とは、たとえばあなたがバーベルで肘の曲げ伸ばしをするトレーニングを行うとして、持ち上げられる最大の重さが10キロとした場合、5キロの重さでも十分効果がある、ということ。歯を食いしばって行うようなきつい筋トレは、筋肉組織を損傷したり、疲労物質をたくさん生むなど、老化を促進する要因にも。むしろ「笑ってできる筋トレ」のほうが効果的なのです。

 

筋トレで若返りホルモンが出る

年齢とともに、そして運動不足の生活によって筋肉は衰えやすくなります。まずはあなた自身の筋力をチェックしてみましょう。1分間、右脚で片足立ちをします。次に左脚でも片足立ちを1分間。よろけることなくキープできればOKです。次に、片足立ちのままひざを軽く曲げてみましょう。10秒キープできますか?このチェックでわかるのは、若々しい立ち姿勢や歩き姿勢を維持する、脊柱起立筋(背骨の筋肉)、大臀筋(お尻の筋肉)、大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)、ハムストリング(太ももの後ろ側の筋肉)、腸腰筋(背骨と骨盤を結ぶ筋肉)などの力。途中で何かにつかまりたくなったり、体がぐらつくなど、うまくできないようであれば、今日から両手を前に出してお尻を後ろ側に上げ下げする「スクワット」を1日10回行いましょう。筋トレをすると、筋肉から「アイリシン」というホルモンが分泌されます。このアイリシンには、脂肪を燃やしやすい「褐色細胞」を増やしたり、骨を強くするといった効果を発揮することがわかってきました[10]。身体運動には、〝アンチエイジングホルモン〟ともいわれるDHEA(デヒドロエピアンドロステロン)の分泌を高める働きも。DHEAは、筋肉をつくり、やる気のもととなる男性ホルモン(女性の体内でもつくられています)や、美肌や若々しさを維持する女性ホルモン、若さを保つ成長ホルモンの材料となるホルモンです。DHEAの分泌がアップすると、これらのホルモンの分泌もアップ。アンチエイジングの好循環をめぐらせることができます。筋トレは脂肪燃焼細胞を増やすホルモン、若返りホルモンの分泌を高める。

 

若返り&脂肪燃焼にジムはいらない?

前で解説したアンチエイジングホルモン「DHEA」は、そのほとんどが副腎でつくられますが、現代人には精神的なストレスや肉体の疲労によって副腎が酷使され、DHEAの分泌が低下している人が多く見られます。副腎を疲れさせるストレスを軽減し、大きいリフレッシュ効果をもたらしてくれるのも運動のいいところです。人は、一度に二つのことを行うのは難しいもの。だからこそ、運動が効果的です。悩みごとがあったり、否定的な考えが頭を占領しているときでも、体を動かすといつのまにか気が晴れて、心のリセットができるものです。若々しさを保ち、筋肉を増やし、脂肪を燃やしたい。そう思ったときに「スポーツジムに入会しなくちゃ」「ウエアをそろえなきゃ」「家の中でできるマシーンを買う?」といった発想は不要です。美しい姿勢を意識して早歩きをするだけでも、姿勢を保持するためのコアマッスルを鍛えることができます。また、日常の中で手軽にできるのが、自転車こぎです。天気のいい日に景色を眺めながら自転車に乗るのは気分がいいもの。あえて坂道を選んで一生懸命自転車こぎをすると、太ももの前側の大腿四頭筋や、骨盤を正しい角度に維持し、美しい姿勢の要である「腸腰筋」を大きく刺激できます。自転車こぎは有酸素運動なので、脂肪の燃焼パワーを高めることもできます。ジムもウエアも時間もいらない!「移動は自転車」で若さをキープ。

第11の習慣は、「毎日のストレッチ」をあたりまえにすること。ストレッチといえば「筋肉を伸ばして、柔らかくするもの」というイメージがあり、「アンチエイジングにどう関係があるの?」と思うかもしれません。しかし、筋肉がしなやかさを保っているかどうかは姿勢に大きく影響します。なぜなら、姿勢は、あなたの第一印象を決定づけるからです。胸が前側に縮まり、猫背の姿勢で筋肉が固まっていると、どんなにお洒落な人でも老けて見えます。反対に、胸を広げて背筋が伸びた女性はそれだけで、元気で若々しく魅力的に見えるものです。猫背は内臓を常に圧迫する姿勢でもあるため、悪い姿勢で体が固まっていると、胃の不快症状や便秘の原因になることも。ストレッチを毎日の習慣にすると、血行が良くなり、全身のすみずみに酸素や栄養を届けることができ、老化防止に役立ちます。

 

毎日セルフストレッチ。月1でプロに頼る

不意に撮影された自分の写真を見て、ショックを受けたことはありませんか?自覚があるときには姿勢を整えているつもりでも、ちょっと気を抜くと、本来の姿勢に戻ってしまうものです。また、どんな人でも、前後左右どこかしらにゆがみを持っています。放置するとそのゆがみは年齢とともにどんどん頑固になっていきます。しなやかに伸び縮みする筋肉づくりのために、また、凝ってしまった体をほぐすためにも有効なのが、ストレッチ。左の4種類で、上半身、下半身をまんべんなくストレッチすることができます。毎晩、お風呂上がりに3分間行いましょう。さらに月に1回ほどのペースで、ストレッチを指導してくれるサロンや整体院などで体の状態をチェックしてもらうのもおすすめ。自分では気づきにくい体のクセや、ストレッチすべき場所をプロの目で教えてもらうことができます。寝る前3分のセルフストレッチ下半身をほぐす@開脚し、上体を前に倒して両手をできるだけ前に伸ばす。20秒キープす上半身をほぐす@足を前に出し、ひさを曲げて座る。上体を後ろに倒して床に手をつく。そのままの状態で頭を前後に倒したり左右に回す。下半身をほぐす●足裏を合わせ、両手で足を股間に引き寄せる。上体を前に倒す。20秒キ上半身をほぐす●開脚し、左腕を上げて上体を右に倒し、右手を左の足先に向かって伸ばしたまま20秒キープする。反対側も同毎日、入浴後に4種類のストレッチを。1日分の全身のゆがみをリセット。

 

1日数回、足指ストレッチ

運動をするときには、「足指」にも注意を向けましょう。あなたは裸足になったときに足指を開いて、グー、チョキ、パーができますか?このチェックで見ているのは、足指の力と柔軟性です。足指1本1本に意識を届かせて、思うように動かすことができれば、立ったときにも地面をつかむように足裏をコントロールすることができます。しかし、グー、チョキ、パーができない場合は、足指を動かす筋力が低下しています。歩いたり、走ったりしたときにぐらついて、足首やひざにも痛みが起こりやすいといえます。起床後やお風呂上がりに靴下をはくときや寝る前に毎日練習をすると、足指力が鍛えられます。また、運動時には足指を包み込むスニーカー選びも大切です。底が分厚くてクッション性の高いものが足を痛めない、と思われていますが、こういった靴はかかとで着地をすることになり、ひざを痛めるリスクが高くなります。最新のスポーツ医学の研究によって、底の薄い靴で足底の前部分(足指の付け根のあたり)で着地したほうが故障しにくいことがわかっています。この着地の仕方を、福岡大学スポーツ科学部の田中宏暁教授は「フォアフット着地」と命名しています。素足の感覚や足指が動く感覚をより感じることができるのが、5本指ソックスです。また、イタリアのメーカーからは薄底でさまざまなバリエーションの5本指シューズが販売されていて、いずれも私は愛用しています。地面をつかみ、体をバランスよく支える「足指力」。40代からは「5本指」アイテムを導入。

 

まめに動く人は健康を維持しやすい!家事で筋トレ

運動不足の習慣を見直すことで、さまざまな健康効果が得られることがわかってきています。女性5万277人を対象にアメリカで行われた研究では、座って過ごす時間が長い人ほど2型糖尿病の発症リスクが高くなる。特に、テレビを見て過ごす時間が1日あたり2時間増えるごとに糖尿病発症リスクは14%高くなり、逆に、歩行を1日1時間増やすごとに糖尿病発症リスクが34%減少する。その一方で、家事などで、家で立ったり歩いたりする活動が1日2時間増えると、リスクは12%減少すると報告されています[11]。ときには掃除機ではなく、ぞうきんがけをしてみるのもいいでしょう。私も毎朝、玄関のたたきを拭き掃除していますが、運動になる上、心もさっぱりと気持ちよくなります。また、趣味を「体を動かすもの」にするのもいいでしょう。心の癒やしを求めるなら土いじりもおすすめ。水やりをする、しゃがんで草抜きをするなど、あっという間に汗ばみ、運動効果が得られます。

老けない睡眠

寝る時間より起きる時間にこだわる

「第12の習慣」は、「よい睡眠のために、起床時間を見直す」ということ。40代以降になると、眠りたいのになかなか寝付けない、夜中に目が覚めるなど、眠りのトラブルが増えてきます。だからこそ、スムーズな眠りのために、自ら工夫することが大切になってきます。じつは、睡眠は、脳はもちろん、全身の健康にもかなり重要な役割を果たしていることがわかってきました。人間には「サーカディアンリズム(概日リズム)」という約24時間周期のリズムが備わっていて、一日を通してさまざまなホルモンが体の調子を整えています。数あるホルモンの中でも睡眠にとって特に重要なのが、「セロトニン」と「メラトニン」という二つのホルモン。セロトニンは体を活動的にし、メラトニンは体を眠りに導くホルモンです。このメラトニンは、朝起きる時刻によって、夜、分泌する時間が決まります。つまり、良い睡眠のためには「起床時間」を意識する必要があるのです。

 

快眠ホルモン分泌のピークを〝つくる〟

夜にスムーズな眠りを促すメラトニンは、朝起きた時間から14時間前後に分泌がスタートし、その2時間後に分泌がピークになることがわかってきました。メラトニンの分泌には、光が大きく関わります。朝、7時に太陽光を浴びると、目の網膜から脳にある体内時計の「主時計」に信号が伝わり、体内時計のスイッチがオンに。すると夜11時ごろにメラトニンが大量に分泌され、眠くなるのです。メラトニンには免疫力を高めたり、老化を進める原因となる活性酸素を消去する働きもありますが、年齢とともにその分泌量は減少します。自らの働きかけでメラトニンを増やすには、朝、決まった時間に起きてすぐにカーテンを開け、しっかりと太陽光を浴びることがなにより効果的です(136参照)。また、睡眠中には脂肪を代謝したり、皮膚や組織の修復を行う「成長ホルモン」が集中的に分泌されます。昔から、「寝る子は育つ」といわれ、成長ホルモンは子どもの頃の筋肉や骨の成長に欠かせないホルモンとしておなじみですが、成人になっても細胞の新陳代謝のために日々活躍しているホルモンです。特に深夜0時ごろに成長ホルモンの分泌はピークになるので、体の疲れをとり、修復作用を高めるには、できる限りこの時間に布団に入っているようにすることが大切です。ちなみに私は、平日は朝4時に起き、夜9時に眠るという生活を続けています。早朝は空気もおいしく、最高のひとときです。体内時計と就寝時間を調整して、睡眠と細胞修復をつかさどる二つのホルモン分泌をスムーズに!

 

深い睡眠が脳の老廃物を掃除する

ぐっすりと眠ることは、脳の老化予防にも多大な貢献をしていることがわかってきました。最先端の研究によって「睡眠によって脳の老廃物が洗い流されている」ということがわかり、アルツハイマー病など多くの脳疾患の解明や治療に貢献するのではないかと注目されています[12]。この研究を行ったのは、米国ロチェスター医療大学の共同センター長、メイケン・ネダーガード博士とその研究チームです。彼らはこれまでにも、脳には、老廃物を排出する独自のメカニズムがある、ということを発見しています。一般に、体内の老廃物はリンパ液によって排出するシステムがありますが、脳には異物が混入しないよう独自のバリアがあるため、リンパのシステムは脳には及ばないことがわかっていました。しかし、新たな技術によって、生きた動物の脳の状態を観察することが可能に。人間に似た脳を持つハツカネズミの脳を観察したところ、睡眠中には脳細胞内に脳脊髄液が流れ込み、古いタンパク質を洗い流して排出していることがわかったのです。その「お掃除システム」は、起きているときに比べて10倍も活性化していることが明らかに。しかも、睡眠中には、脳細胞が60%ほど収縮することによって、多くの脳脊髄液が流入できるように空間をつくり出し、脳のお掃除が効率的に行われているそうです。この睡眠中のお掃除システムは、特に深い睡眠のときに活発に働きます。ちなみに、私は自分の睡眠を毎晩モニターするのに、スマートフォンの無料アプリ「SleepTime」を愛用しています。端末に備わっているモーションセンサーを利用して、寝返りの回数などから睡眠の深さや睡眠サイクルをモニターすることができます。睡眠状態を客観的に知る一つの方法として、試してはいかがでしょう。深い睡眠が脳クリーニングのスイッチだった!認知症など脳疾患の解明につながる可能性も!?

 

深い睡眠を導くのは「グリシン」

肌や全身の組織の修復を促す「成長ホルモン」の分泌を促し、脳の老廃物をスムーズに排出して脳の老化も防ぐ……眠っているときにこのような健康効果を得るには、深い睡眠を得ることが大切です。深い睡眠を導く手段として、最近、私が注目しているのが「グリシン」というアミノ酸です。グリシンは、筋肉や皮膚など体を構成するアミノ酸の一種で、体内でもつくられます。食品では、ホタテやエビに多く含まれています。このグリシンは、神経伝達物質としての機能も果たしています。また、肌の張りを維持するコラーゲンの33%もグリシンから構成されています。さらに、体内で抗酸化物質として働くグルタチオンや、筋肉のエネルギーとなるクレアチニンという物質も、グリシンを材料に作られます。グリシンは、眠りの効果として「すみやかに深部体温を低下させて入眠を導く」ことが報告されています[13]。入眠時には深部体温が下がり、この下がり具合が急であるほど寝入りも深くなり、睡眠の質が良くなることが知られています。甘味料としても使われるほど甘いアミノ酸なので、サプリメントとしてとるときにも飲みやすいのが特徴です。コラーゲンの構成成分ですから、コラーゲンをつくる働きも期待できます。サプリメントとしてとる場合は、コラーゲンをつくる際に不可欠な「ビタミンC」を合わせてとると、美肌効果が期待できるでしょう。コラーゲンは、肌質を良くするだけでなく、血管や骨をしなやかに、かつ丈夫にする働きがあるので、老化防止にも貢献します。アミノ酸の一種、グリシンは深い睡眠をもたらす。ビタミンCとの合わせ技で、肌や血管も若返る。

 

睡眠不足は肥満、生活習慣病リスクを高める

良質の睡眠をとることは「太りにくく、生活習慣病知らずの体」にも貢献する、ということが世界の研究でも明らかになっています。2015年にカナダで行われた研究では、5560人の子どもとその両親が調査に参加し、子どもの就寝時間と起床時間、日中に眠気を感じた頻度を報告しました。その結果、睡眠時間が長くなるほど、肥満リスクが減少し、食習慣もよく、日中の活動性も良い、といいことだらけであることがわかったのです[14]。睡眠不足は、体内の遺伝子にも影響を与える、という英国サリー大学の研究結果も注目に値します[15]。研究は、男性14人、女性12人を対象に行われ、被験者らはまず1週間の間、平均5・7時間の睡眠をとりました。その後、1週間にわたって同じ被験者が平均8・5時間の睡眠をとりました。血液を採取して遺伝子の活動を観察したところ、1週間の睡眠不足によって711もの遺伝子に影響があったことがわかりました。これはヒトの全遺伝子数の3・1%にあたり、影響を受けた遺伝子は、炎症や免疫、ストレスに関与するものだったといいます。同研究においては、睡眠不足は体内時計を乱し、心臓病や糖尿病、肥満などの代謝をコントロールする遺伝子の働きも低下させたとも報告されています。わずか1週間で体内にこのような変化が起こるということは、睡眠がいかに私たちの健康に不可欠であるかを物語っているといえます。たとえいま現在、血糖値や脂質に関する値が正常でも、寝不足や質の悪い睡眠がずっと続けば糖や脂質の代謝が乱され、健康がおびやかされる可能性が高いと考えたほうがいいでしょう。睡眠不足で生活習慣病リスクが上がる!免疫力ダウンや、体内の炎症を進める原因にも

 

睡眠2時間前から食べ物とブルーライトを断つ

第13の習慣は、睡眠前に食事をしない、ブルーライトを見ないこと。あなたは、布団に入る直前までなにかを飲み食いしたり、パソコン画面を見たり、テレビドラマを見たりしていませんか?忙しく働く平日ほど、寝る前に「今日一日でやり残したこと」をいろいろとやりたくなってしまう……。その気持ちはとってもよくわかりますが、寝る2時間前ぐらいからは体を〝お休み態勢〟にすることが睡眠中の体の修復やアンチエイジングのためには大切なこと。寝る直前に食べると、食べたものがそのまま脂肪として蓄積されるばかりか、成長ホルモンの分泌を妨げる要因にもなります。また、パソコンやスマホのブルーライトは睡眠を妨げることも明らかになっているのです。今日から、寝る前2時間の過ごし方を見直してみましょう。

 

ブルーライトが睡眠の質を悪くする

ブルーライト(青色光線)は、使いようによっては睡眠の妨げになってしまいます。ブルーライトとは、太陽光に含まれる、波長380~495ナノメートルの青色光のこと。パソコンやスマホ画面にも含まれる光です。日中にブルーライトを浴びると、目の網膜を介して脳に信号が送られ、脳は「明るい」「朝だ」と認識してメラトニン分泌を抑え、覚醒モードのスイッチが入ることは、122でもお話ししました。時差ぼけの解消のためには太陽光を浴びたほうがいい、といわれるのはこのブルーライトの強力な覚醒作用によるものです。ところが、深夜遅くまでパソコンやスマホ、テレビ画面を見ていると、目から入ったブルーライトが脳に働き、「朝だ」と間違った信号を送ってしまう。すると、睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌が30%も減少し、睡眠の質を悪くしてしまいます。英国エディンバラ睡眠センターの研究によると、「就寝1時間前のメールチェックは、メラトニン分泌をストップさせ、エスプレッソコーヒー2杯分の覚醒作用がある」ことが報告されています。特に仕事のメールなどはストレスを強めるため、翌朝に回したほうが賢明です。夜にどうしてもパソコン画面を見なくてはいけない場合は、ブルーライトをカットするメガネなどを利用するのもいいでしょう。また、オフィスや生活空間に普及しているLED照明にもブルーライトは含まれています。就寝の2時間前になったら、部屋の照明も暗めに調整すると、入眠もスムーズになるでしょう。就寝前のテレビやパソコン、メールチェックはNG。睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌を抑えてしまう。

 

夜遅くの飲食は、昼間の20倍、脂肪に変わりやすい

夜10時から午前2時は「美肌をつくるシンデレラタイム」という話を耳にしたことがあるでしょう。良質な睡眠のためには、7~8時間ほど、しっかり睡眠を確保することに加えて「いつ寝るか」も大切です。夜の10時ごろから午前2時ごろに深い眠りに入っていると、アンチエイジングホルモンである「成長ホルモン」が最も活発に分泌します。さらに、就寝前には甘いものや炭水化物、アルコールなどは極力とらないことが大切です。その理由は、脂肪に蓄積されてしまうため。夜に糖質をとると血糖値が上昇し、血糖値を抑える作用があるインスリンが膵臓から分泌されます。ところが、睡眠中は糖を消費するチャンスがほとんどないため、血液中に余った糖をインスリンが脂肪としてたくわえてしまうのです。さらに、私たちの脳や肝臓には体内時計を調節し、脂肪の蓄積をうながす「BMAL1(ビーマルワン)」というタンパク質が存在しますが、BMAL1は午後3時から徐々に増え、午後10時から午前2時ごろにピークとなります。ピーク時の量は、最も少ない午後3時と比べて約20倍にも。ですから、午後3時におやつを食べてもさほど肥満しませんが、夜遅くに糖をとると、直接、体脂肪として蓄積されやすいのです。つまり、太りたくない、若々しさを維持したい、というときには夜はおとなしく眠ってしまうのが一番、というわけです。「夜、寝る前にお腹がすくと眠れません」という人がいますが、そのようなときはホットミルクやハーブティーなど、低糖質のものでお腹を満たすようにしましょう。夜中は脂肪蓄積ホルモン「BMAL1」分泌のピーク!一日のうち、最も太りやすいとき。

 

光が体に「起きる」「眠る」のリズムを作る

人は毎朝、太陽光を目から取り込むことによって、脳内にある体内時計をリセットしています。このため、午前中のうちにしっかりと太陽光を浴びることが有効で、午後以降には太陽光の体内時計リセット効果は期待できません。海外渡航が多い人は、時差ぼけ予防のために意識的に朝早い時間帯に光を浴び、夕方以降はサングラスなどで目に入る光をシャットアウトするなどし、光を浴びる時間を意識的にコントロールするといいでしょう。最近では、耳から光を取り込む器械が睡眠を助けるということで話題になっています。フィンランドで開発されたもので、日照時間の短い冬にうつ病患者が増え、自殺率も増加することが問題視されたことから、器械の開発に至ったといいいます。シフト勤務や海外出張の多い方など睡眠サイクルを保つことが難しい方や光を浴びることが少ない職場環境で働く人におすすめです。

 

老けない精神

気持ち5割で人とつきあう

第14の習慣は、気持ち半分で人とつきあうということ。優しく、気配りができる人ほど難しいことかもしれません。しかし、相手が100%満足いくようなつきあいを、常にすることは不可能だと思っていれば、人間関係でくよくよと悔やむことも少なくなります。肉体が受けるストレスとともに、精神的ストレスも、人を老化させる大きな要因となることを知っておきましょう。中国の戦国時代の思想家、荘子は、「君子の交わりは淡きこと水のごとし、小人の交わりは甘きこと醴のごとし」らいという言葉を残しています。醴とは、甘酒のようなもののこと。賢明な人は、淡々として適度な距離をとりながら人とつきあうが、人として器量の小さい人は甘くベタベタとした関係を好む、という考えです。人と適度な距離をとることも、疲れをためないための処世術かもしれません。

 

惰性のつきあいなら、断ってよし

人間関係で疲れたら、まずあなた自身の「人づきあい」をいちから整理してみましょう。人づきあいがうまくいっていて、良好な人間関係を築くことができているならば、毎日はとても楽しいものになります。しかし、人と人が関わり合うと、必ず、気遣いしすぎて疲れたり、誤解が生まれたり、もともとの相性の悪さなどからなんらかのトラブルが起こり、精神的ストレスが強まることがあります。誰もが、人には嫌われたくないと思うものです。しかし、嫌われることを過剰に怖がると、八方美人的な態度をとらざるを得なくなる場合も。ちょっとしたお茶会、飲み会など、本心では行きたくないものにまでつきあうことになり、心身ともに疲れて「やっぱり行くんじゃなかった」と後悔する……こうなると、人づきあいはストレス以外のなにものでもなくなるでしょう。また、価値観が合わない相手に振り回され、言いたいことを我慢している関係性でも、ストレスはふくらむいっぽうです。心のストレスは体の炎症を引き起こす炎症性サイトカインの産生を促し、うつ病のほか、心臓病や脳卒中、がんや糖尿病を引き起こすリスクを高める、という報告もあります[16]。人間関係はライフステージごとに変わり、そのときどきで必要な友人関係も移り変わっていくものです。「なんとなく惰性でつきあってきたけれど、最近、この関係が負担」というような関係であれば、思い切って区切りをつけるのも、賢い選択かもしれません。心の疲れを感じたら、「これは自分にとって必要なつきあいか」と振り返るチャンスなのだと受け止めましょう。一つの関係が終われば、新しい関係が始まることもあります。心のストレスは体の炎症を引き起こし、老化を進める。惰性でつきあうより、必要なつきあいを選択する目を持とう。

 

SNS疲れを解消する「デジタルデトックス」

あなたは現在、TwitterやLINE、FacebookなどのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を利用していますか?SNSを利用しているユーザーのうち、53%がSNSを「面倒」だと感じている、という調査結果があります(Vol.14全国消費者価値観調査[CoVaR])。確かに、世界中の誰とでも瞬時にアクセスでき、情報交換ができるSNSは便利です。しかし、問題は「とらわれすぎる」こと。プライベートだけでなく、職場でもSNSが使われ、「いつも監視されているような気がする」とか「自分が気軽に書いたことで批判を受けた」などの経験で疲れはてている人も多くいます。それでも「周囲から取り残されたくない」と思い、常にチェックしていないと落ち着かない……ここまでいくと、SNSのマイナス面が強くなっていると判断したほうがいいでしょう。SNSに費やした時間と体重、食行動などを調査したカナダの研究(9858人の学生が対象)があります。その結果、SNSは体重増加や不健康な食行動(朝食抜きや砂糖入り飲料の摂取)と結びつきやすいことが明らかになっています[17]。人との交流を楽しむために始めたはずのSNSが、ストレスになったり、運動不足を招いたりするのは残念なことです。心の疲れを感じたときは、●SNSから思い切って距離を置いてみる●日が暮れたら、パソコンやスマホなどの電源をオフにするこのような「デジタルデトックス」が、現代人にとってとても効果的な回復法になります。食べ物も、情報も、とりすぎは危険です。何を取り入れて、何を捨てるべきかということは、心身の健康に大きな影響を与えるのです。SNSはユーザーの半数以上が「面倒」と感じている。しかも体重増加、不健康な食事を誘発する原因に。

 

「もやもや」や「グチ」はためこまず、こまめに吐き出す

がんばっているのに、認めてもらえない。理不尽なことをされたけれど、従うしかない。うっかりミスで失敗してしまった。こんなふうに「もやもや」したストレスを抱えたとき、あなたはどんなふうに対処していますか?人に頼ることが苦手な人は、そんなときも自分だけで解決しようとします。しかし、もやもやした気持ちやイライラ、ショックな感情を自分の中で抱えっぱなしでいるとどうしても、人は「どうしてこんなことを乗り越えられないのだろう」「いつまでもクヨクヨしてはダメだ」と自分を責めるようになってしまいます。こういうときに本当に必要な対策は、満たせないあなたの思いをそのまま誰かに「受け止めてもらう」ことです。どうしようもないことだとはわかっているけれど、とにかく誰かに聞いてほしい!そんなときは、迷わずグチを吐き出してしまうと、気持ちがすっきりします。意外なことですが、宅配便を持ってきてくれる顔見知りの人や、ご近所の人など、実際に抱えている問題とはほど遠い人に話して「大変ですね」「がんばってるね」などと言われるだけで気持ちが軽くなることもあります。ただ、抱えている問題によっては、グチを言う相手を選ぶ必要があることもあります。相手が噂好きでおしゃべりな場合は、周囲に話の内容を広められ、後で困ったことになるかもしれません。グチを言うときは、誰に、どのくらい吐き出すかを冷静に考えながら。その技術は、何度も繰り返すうちに上手になってくるものです。もやもやした思いは、抱え込むと自分を責める感情に変わる。グチを言うときは、誰に吐き出すか、冷静に相手を選ぶ。

少しはサボる

第15の習慣は、楽をする、休むことを怖れない、ということ。少しはサボろう、と自分に言い聞かせるくらいでちょうどいいと思うくらい、日本人は勤勉です。日本人の睡眠時間は、世界18カ国中、韓国に次いで2番目に短いことがわかっています(2009年OECD調査より)。長時間勤務が当たり前になると、ストレスがたまります。体調も悪くなり、仕事の処理能力も低下、それがさらにストレスをふくらませ、まさに悪循環です。医学的な視点からいうと、仕事を家に持ち帰って夜にやるのは健康に悪影響をもたらします。緊張を強いるような思考をすると、睡眠ホルモンのメラトニン分泌が妨げられ、眠りの質が明らかに下がります。いっぽう朝は、起床後に活力アップをもたらす「コルチゾール」というホルモンが出ているので、さほどストレスを感じず対処ができるのです。気の重いことは疲れ果てた夜にはやらない。これも自分を楽にする一つの方法です。

 

オフィスの無駄話は無駄じゃない

職場で、リアルなおしゃべりが減っていると感じませんか?効率化を重視し、誰もが自分のキャパシティー以上の労働量を抱えこむ状況になっています。おしゃべりをする暇があったら一つでもタスクを進めなければ、という厳しい労働状況であるのが現実でしょう。しかし、たわいもない話をすることは、目に見えない形で心を楽にしてくれるばかりでなく、実際に仕事の効率を良くすることがわかっています。社会心理学の世界では、「雑談が生産性を向上させる」という考え方があります。たとえば、聞いている人が会話している人の言葉や仕草を無意識に真似る「ミラーリング」をすると、互いの結束力が高まることがわかっています。また、メンバーの誰かが楽しい気分でいると、他の人にも前向きな気持ちが伝染する「情報伝染」が起こり、職場の緊張を和らげるのに役立ちます。元気になりたいときには、元気そうな人のそばに行き、おしゃべりするといいのです。企画を出すよう指示されているけれど、一人で考えても何も浮かばない。そんなときにも、雑談をする中で、ふとアイデアが〝降りてくる〟ことがあります。このように、私たちが思う以上に、コミュニケーションの力は大きいのです。そうはいっても、職場で人と密接に会話することがストレスになる場合もあります。ランチタイムだけでも外に出て、屋外の空気を吸ったり空を見上げたりして、一人だけの時間を過ごすと、リフレッシュできます。日中に太陽の光を浴びると、その刺激を脳が受け取り、夜にしっかり睡眠ホルモンのメラトニンが分泌し、深い眠りが導かれます。ついでに10分間、周囲をウォーキングすれば、運動不足も解消できますよ。雑談が仕事の生産性を高め、前向きな気持ちが伝染すれば、職場が明るくなる。

 

1日10分、頭をからっぽにしよう

私は毎朝、6時過ぎにオフィスに入って、10分間ほどただぼんやりと過ごすことを日課にしています。このとき、目も耳も、頭も、しっかりと休ませるのがポイントです。体には、視覚や嗅覚などさまざまなセンサーが備わっていて、人は無意識のうちに常に外界からの情報を受け取って反応をし続けています。外界とのやりとりをシャットアウトし、いっさい「反応しなくてもいい」時間を作るのは、常に周囲に気配りをしているような人には特に重要なことです。10分間を過ごす場所は、自分の部屋でも、静かな喫茶店でも、安心できる場所ならどこでも大丈夫です。この「10分間、何もしない」という行為は、プレッシャーにさらされたときにもおすすめです。結果を出さなければ、失敗してはいけない、と思うと、緊張や不安がどんどん増幅していくものです。そういったときに10分間、ぼんやり過ごすと、「今、自分は緊張しているな」と気づくことができます。そうやって自分を客観視できると、自然に心の乱れがおさまってきて、「すべきこと」に意識が集中できるようになるのです。もしも失敗しても、なんとかなるさ、と楽観的な気持ちが湧いてくれば、しめたものです。大リーグのイチロー選手は打席に立つたびに、バットを持った側の腕をピッチャーの方向に突き出し、ユニフォームの右肩の部分をつまみます。ラグビーの五郎丸選手はキックの前に両手の指を合わせたポーズをします。テニスの錦織選手は、サーブを打つ前に必ずボールボーイにタオルをもらうといいます。彼らはこうした決まった〝ルーティン〟と言われる動作をすることによって、自分と向き合えば心が静まる、ということを知っているのではないでしょうか。10分間、頭をからっぽにして、何もしない時間をつくる。自分の緊張やプレッシャーを客観視する時間に。

 

言葉とイメージで心を浄化する

最後の習慣、第16の習慣は「心をきれいにする」です。いったい何のことか、と不思議に思われるかもしれません。老化には、体の中で起こるものもあれば、心の中で起こるものもあります。心の中の出来事を目で見ることはできませんが、心の中に背負っている記憶の固まりがどんどん重くなって、人の背中は曲がっていくのではないかと思うことがあります。過去の記憶に執着すると、心の自由度が減り、老いは確実に進みます。何度もつらい記憶をリピートしていると心が停滞します。変えられないどうしようもない過去にとらわれている自分に気づいたら、その思考を止めることを意識しましょう。さらに、「楽しいイメージ」を思い浮かべて脳に送り込むと、脳そのものの記憶も変えることができることがわかっています。

 

楽しいイメージで脳は変わる

ストレスを受ける期間が長期間に及び、物覚えが悪くなったり、言おうと思ったことがうまく言葉にならない、いくつかのものから一つのものを選択するのが難しい、といった経験はありませんか?ストレスが慢性的に加わると、脳の海馬や前頭前野が萎縮します。たとえば、苦しい記憶がたえず再生される症状を持つPTSD(心的外傷後ストレス障害)の患者は、脳の海馬が萎縮し、その体積が減少していることが明らかになっています[18]。では、記憶はずっと私たちを苦しめるものなのでしょうか。ノーベル生理学・医学賞受賞者であり脳科学研究者でもある利根川進さんが、2014年に驚くべき研究結果を発表されています。これは、記憶をつかさどる脳の海馬の特定の部位を光で操作することによって「嫌な出来事の記憶」を「楽しい出来事の記憶」にスイッチさせることができる、というもの[19]。マウスで行われた実験ですが、嫌な出来事があっても、そこに楽しい出来事の記憶をかぶせることによって、脳そのものの記憶を変えることも可能であることを示します。この発見は、嫌な出来事が積み重なり、楽しい出来事を思い出すのが難しくなっているケースが多いうつ病患者に行われている心理療法に科学的根拠を与え、今後の治療法の開発にも寄与することが期待されています。このように、最新の脳科学の世界でも、「記憶は自分の思い次第で浄化していくことができる」ことが証明されつつあります。マイナスの記憶を延々と再生し続けるのは、自分をいじめる行為かもしれません。自分をいじめるより、自分に優しくすることを選んでほしいと思います。慢性的なストレスは、脳の海馬を萎縮させる。苦しい記憶に楽しい記憶をかぶせることで記憶は変わる。

 

「嫌なやつ」「マイナスの出来事」はすべて錯覚?

「天上天下唯我独尊」というお釈迦様の言葉をご存じでしょうか。私が学生の頃、講堂で先輩がこの落書きをしていたのを見たときから、ずっと印象に残っている言葉です。この言葉はよく、「この世で一番尊いのは、この世にただ一人しかいない自分である」というふうに、自己中心的な意味で解釈されることがあります。しかし、本来は「自分という存在は、誰にも変わることができない人間として生まれている。この命のままで尊い」ということを意味しています。人はそれぞれ、自分だけの持ち味を生かして自分らしく生きていくことができる存在である。自分の頭で考えることが全てを決めていくのだ、という真実をこの言葉は教えてくれます。お釈迦様はまた、「因果応報」という教えも残しています。この世に偶然起こる出来事など何一つなく、物事にはすべて原因があり、縁に触れて結果が生まれます。出来事とは、不幸なことだけでなく、幸福なことも含まれます。ある段階を自分が卒業できないかぎりは、繰り返し同じような困難が起こる、という経験は、誰にもあるはずです。「嫌な人がいる」のではなく「嫌な人だと思う自分」がいるのです。その段階を乗り越えないかぎり、次々にあなたにとって「嫌なタイプの人」は現れ続けるのです。なかなか厳しい教えだな、と私自身も思いますが、このように考えると、起こったことを人のせいにはできなくなります。自分はこの世に、お勉強をするために生まれてきたのだ、と思うと、降りかかる困難と向き合う覚悟が生まれてきます。不摂生をして病気になるのも、ストレスでしんどくなるのも、自らが選択して生活をしてきた結果です。ならば、せっかくの経験を生かして次のステップに進むチャンスなのだと受け止める。アンチエイジングにも通じる考え方です。この世の出来事は、すべて原因があって起こる。不調は自分で選んだ生活の結果。変えることができるのも自分。

 

お風呂は最高のデトックス空間

毎日のお風呂が、アンチエイジングにつながる方法を紹介しましょう。入浴は疲れをとり、リラックス効果をもたらしますが、実はそれだけでなく、体内にたまった老廃物や有害物質を汗とともに排出する「デトックス効果」もあります。デトックスのためには、入浴剤やバスソルトをマグネシウム成分が含まれたものにするのがポイント。入浴中の発汗作用が高まり、湯冷めしにくいのが特徴です。お風呂から上がる直前に、足元に冷たいシャワーをかけると、皮膚から伝わる刺激がストレスをコントロールする「副腎」に刺激を送り、ストレスに強い体を作ることができます。なお、お風呂から上がったら、汗として失われた水分とミネラルを補給することも忘れずに。スーパーなどで売っているにがりを少し溶かした水を飲むとマグネシウムを補うことができます。就寝前にゆっくりと入浴をすると、体の深部体温が一時的に上がり、その後、体温がスムーズに下がるときに寝入りやすくなります。

 

サプリの活用ダイエット

食事だけでは栄養不足になりやすい

ビタミンやミネラルは、健康に気遣った通常の食事をしていれば必要な量が摂取できる、と思っていませんか。実は、左のグラフのように、過去40年間で野菜や果物に含まれる栄養素の量は激減しています[20]。かつて、野菜や果物が育つ土壌は、農薬や化学肥料を使わなかったために栄養豊かでした。また、流通手段が発達していなかったために、野菜も果物も収穫直後のとれたてのものを食べることができていました。しかし、近年は農地が栄養分を失った上、流通過程を経ることによって野菜や果物がもともと持っていたビタミンやミネラルの量も、失われやすくなっています。また、糖質のとりすぎやストレスなどによって、現代人はビタミンやミネラルを体内で消耗しています。これでは、かなりがんばって野菜をとっても、体が必要としている量を確保することは難しくなります。このように、ビタミンやミネラルが不足しがちな私たちが健康を維持するだけでなく、アンチエイジングのために役立てるには、必要な栄養素を見極め、サプリメントとして量を補うことが大切です。あわせて私たちは日々、無意識のうちに有害金属を取り込んでしまっていることは前述した通りです(96)。体内に取り込んでしまった有害金属を排出するときに役立つミネラルがあります。ここからは、アンチエイジングのためにとりたいサプリメントについて、おさらいしていきましょう。野菜や果物をせっせと食べても必要量に足りない!サプリメントで不足する栄養素を補おう。

 

信頼できるサプリメントの選び方

通常の食生活だけでは不足しがちな栄養素を補うのがサプリメント。わが国では薬ではなく「食品」として販売されています。形状は、錠剤、カプセル、粉末、液体など、通常の食品とは形状が異なるものとなっています。サプリメントとビタミン剤が混同されることがありますが、ビタミン剤は薬に分類されます。薬は薬事法という法律に基づいて、厚生労働省の検査を経て、効果や効能を表示することができます。しかし、効果、効能がある反面、副作用を起こす可能性もあるため、基本的には医師の処方箋や薬局での購入が必要となります。サプリメントは、2000年ごろから一気に普及が進み、今ではコンビニでも手軽に買うことができます。しかし、薬ではないために、ほんのわずかだけでも成分が入っていれば表示ができるなど、粗悪品も多く流通しているのが問題点です。サプリメントも、きちんとした効果を発揮するものを製造しようとすれば、相当のコストがかかり、高額となります。とはいえ、「高いものなら品質が良い」と言い切れるわけでもありません。一つの目安としては、栄養療法や抗加齢医学を専門とするクリニックの医師がすすめるものなら、その医師が責任を持っているという点で安心できるでしょう。また、ロングセラーとなっている商品はそれだけ効果を実感している人が多い、とも考えられます。いずれにしても、評判だけを聞いて、お得だからとまとめ買いをするのはNG。サプリメントは生ものですから、鮮度も大切。さらに自分が飲んでみて「いい」と実感してから、追加して買うようにしたほうがいいでしょう。だいたい、2~3カ月ほどで飲みきれる分量にしておきましょう。専門医の太鼓判サプリなら安心。サプリメントは生もの。鮮度も大事!

 

まずは2週間、同じサプリをとり続けてみる

体の調子が悪くなったときに、医師の診断を受け、すみやかに薬を処方してもらう、という方法が必要なときは多々あるでしょう。しかし、生活習慣や栄養素の偏りが原因と考えられる慢性的な不調が起きている場合、第一段階●まずは食生活を見直してみる第二段階●サプリメントを飲んで体調を整える第三段階●それでも変化がなければ、専門の先生を受診し治療を受けるという三つのステップを踏むほうが、単なる対症療法に終わらず、根本解決につながる、と私は考えています。食生活の改善については、本記事でお伝えした「空腹を感じる」「糖質の量を減らしてみる」「使う油を変える」などをぜひ実践してください。サプリメントをとるときは、まずは2週間のスパンでとらえてほしいと思います。とったものが体内で吸収され、再構成されて細胞で力を発揮し、その効果が自身で感じられるまでには、最低でも2週間は必要です。サプリメントが効いているかどうかを見極めるには、●肩こりやイライラなど気になる不調は変化したか●よく眠れているか●疲れにくいか●お通じの変化はどうかといったことを振り返って、メモとして記録してみるとわかりやすいでしょう。多くの患者さんの意見を聞いていると、「自分に必要なものは、自然と続けて飲みたくなる」とおっしゃっています。反対に、なんとなく飲みたくなくなったら、お休みしてみるのも一つの方法。それで不調を感じたら、また飲めばいいのです。効果が出るまでの2週間は続けて飲んでみる。ときには「断サプリ」で体の様子を確認するのもいい。

 

ベースとなるのはマルチビタミン&ミネラル

サプリメントには、いくつかの栄養素が組み合わされた複合型と、ビタミンやミネラルが単独でしか含まれない単体型の2種類に分けられます。複合型の代表が、「マルチビタミン・ミネラル」。この複合サプリは、家づくりでいうと「基礎」にあたる栄養成分です。人の体を構成する約60兆個の細胞一つひとつが機能するためには、エネルギーが必要です。エネルギーは、食べ物から取り込んだブドウ糖が、酸素と反応して燃焼することによってつくられます。このエネルギーは、細胞内の「ミトコンドリア」というエネルギー工場のATPという物質の中にたくわえられますが、ATPがうまくつくられないと、だるい、疲れやすい、冷えやすいといった症状が出てきます。ATPがしっかりつくられるには、酸素やブドウ糖といったエネルギーの材料となる物質が必要なのはもちろん、これらの材料がエネルギーに変換されるための「補酵素」の役割を果たすビタミンやミネラルの存在が不可欠です。特に、ビタミンB群や鉄が不足すると、エネルギー不足を引き起こしてしまいます。マルチビタミン・ミネラルは、その名の通り、ビタミンとミネラルが数種類以上、ほどよいバランスで配合されているので、ふだんの食生活では不足していたり、消耗していたりする栄養素を補うことができます。ビタミンとミネラルをまんべんなく補うことによって、元気になる、代謝が上がって太りにくくなる、免疫力が上がる、細胞の老化が抑えられる、疲れにくくなるといった効果を実感できるでしょう。「マルチビタミン・ミネラル」で体調のベースづくりを。多種類を補えば、体調も多方面から底上げされる。

 

シワやシミ、だるさが気になったら「鉄」の不足を疑う

女性は毎月の月経によって、1カ月に30mgの鉄を失うといわれます。このため、閉経する前の女性にとって、鉄は毎日、しっかり意識してとるべきミネラル。また、鉄は月経以外でも全身のあちこちで日々消費されています。全身の細胞がエネルギー源としている「ATP」というエネルギー源も、鉄が不足すると十分につくることができません(64)。このため、鉄が不足すると全身のエネルギー不足を引き起こし、体温維持ができず、冷えが起こります。疲れやだるさを感じたり、偏頭痛といった不調も起こりやすくなります。鉄はコラーゲンの合成にも関わっているため、鉄が不足するとシワが増えたり、髪のぱさつきや爪の割れが起こります。シミを消す酵素「カタラーゼ」の働きにも鉄は関わるため、不足するとシミが増えたり、あざが消えにくくなります。ほうれんそうやひじき、プルーンをしっかり食べているから大丈夫、という人もいますが、残念なことに植物性の「非ヘム鉄」は体への吸収率が5%以下と少なく、レバーや赤身肉といった動物性タンパク質に含まれた「ヘム鉄」のほうが10~30%と、はるかに吸収率が高いのです。自分が鉄分不足かどうかを知るために、一度は病院で血液検査を受けてみましょう。一般に、鉄分不足や貧血の判断は血液中の赤血球の血色素の量を見る「ヘモグロビン検査」が行われ、女性は12~16g/dlが正常値とされています。しかし、ヘモグロビンが正常値であっても、体内では鉄不足が進行している場合が珍しくありません。体内の鉄不足を本当の意味で突き止めるには、筋肉や肝臓などに蓄えられている鉄の保管庫、〝貯蔵鉄〟の量を示す「フェリチン値」を調べることが必要。当院ではフェリチン値が40ng/mlを下回っていると、鉄不足を疑います。推奨量10~15mg/1日鉄が足りなくなると、全身でエネルギー不足、うるおい不足に。だるさや偏頭痛、肌のシミやシワが気になったら鉄を補う。

 

風邪を引きやすいときには「亜鉛」を補う

疲れがたまって風邪を引きそうだ、最近、風邪を繰り返している。そんなときは亜鉛が有効です。亜鉛が関わっている体内の代謝酵素は200種類以上ともいわれ、DNAやタンパク質の合成、視力や聴力、性ホルモンの分泌、免疫力のコントロール、糖質の代謝など、全身のさまざまな機能に関わっています。細胞分裂が起きるときにはDNAがコピーされていますが、そのコピーのスイッチを入れるのが亜鉛です。また、亜鉛は体内で、活性酸素が細胞にダメージを及ぼすのを抑える抗酸化酵素「SOD」の構成成分でもあります。金属である亜鉛が、体のさび止めの働きをしているのは、実に興味深いことです。亜鉛が不足すると、免疫力が低下します。風邪などの感染症にもかかりやすくなり、傷が治りにくくなったり、粘膜が弱くなったりもします。喉の粘膜がひりひりして風邪を引きそうだ、というときにはすみやかに亜鉛を補いましょう。また、お酒をよく飲む人は、体内の亜鉛が不足しがちになるので気をつけて。アルコールを代謝するときの酵素にも、亜鉛が使われるからです。体内の亜鉛が十分かどうかは、肝機能検査項目に含まれるALP(アルカリフォスファターゼ)という酵素の濃度が手がかりとなります。数値は200(IU/l)が理想ですが、150以下になったら亜鉛不足とみなします。亜鉛が不足すると、有害金属の影響を受けやすくなることも知っておきましょう。亜鉛とカドミウムと水銀は元素周期表では同族の12族にあり、元素の性質がきわめて似ているために、食品中の亜鉛が少なくカドミウムや水銀が多い場合、亜鉛のかわりに、有害金属のほうが体内に吸収されやすくなるのです。日々、亜鉛をしっかりとることが大切です。亜鉛を多く含む代表食材はカキ。日常的にとることができるのは、卵の卵黄、パルメザンチーズや煮干し、ココア、松の実などです。摂取目安量15~30mg/1日風邪を引きやすくなったら、亜鉛を補おう。強力な抗酸化力と、有害金属の排出パワーも。

 

デトックス&抗酸化パワーで老化を予防「セレニウム」

心身のストレスが多く、老化が心配。魚をよく食べるので有害金属の蓄積が気になる、そんな人は「セレニウム」をとりましょう。セレニウムは強力な抗酸化力を持つほか、有害金属の排泄を促すミネラルとして注目されています。セレニウムは土壌中に含まれ、穀物や野菜などに吸収されます。それらの食材を食べることで、私たちの体はセレニウムを取り込みます。土壌中のセレニウムが豊富なほど、その地域に住む人の体内のセレニウム量は増えます。ちなみに土壌中のセレニウムが低いのは、ヨーロッパ、米国、ニュージーランドや中国の一部地域。反対に高いのは、日本、タイ、台湾、フィリピンなどです。1970~80年代には、体内のセレニウム量とがん発生率との関係が注目され、「土壌中のセレニウム量が少ないほどがんの発生率が高くなる」「血液中のセレニウム濃度が低い地域ほど女性の乳がん死亡率が高い」といった研究も報告されました。また、1935年頃に、土壌中のセレニウムが少ない中国東北部の地域で、心臓の内側に損傷が生じ心筋症を引き起こす「克山病」が発生したことも話題に。セレニウムとがんリスク低減の関係については、セレニウムが「グルタチオンペルオキシターゼ」という強力な抗酸化成分の主要成分であることが一因ではないかとされています。抗酸化作用が高いということは、活性酸素の害から全身を守る力が強いということ。アンチエイジングミネラルとして重要なミネラルといえます。セレニウムは、このような抗酸化作用のほかにも、免疫力を高めたり、解毒力を高める作用も高いことがわかっていて、有害金属の「デトックス」のためにも重要です。皮膚に含まれるセレニウム量が少ないと水銀蓄積量が多い、という報告もあります。セレニウムを多く含むのは、カツオやウナギなどの魚介類です。推奨量50~80/1日セレニウムは強力な抗酸化パワーを持つ免疫力を高め、有害金属を解毒する作用も発揮。

 

明け方に足がつるときは、「マグネシウム」をチャージ

ストレスによって失われやすいミネラルの代表は、マグネシウムといわれます。ストレスを強く感じている人、明け方に足がつる、といった人も、マグネシウムを飲んでみることをおすすめします。筋肉の収縮はカルシウムが働くことによって起きますが、収縮した筋肉をゆるめるには、マグネシウムが必要です。細胞外に多いカルシウムと、細胞内のマグネシウム、二つは1:1で存在すると、ちょうどバランスよく互いに拮抗して働くので、〝ブラザーミネラル〟と言われています。成人の体内には約30gのマグネシウムが含まれ、このうち60%が骨に、27%が筋肉中に存在しています。血液中を流れるマグネシウムは全体の1%にすぎませんが、その働きは大きく、300種類の酵素の反応に関わっています。なかでも、重要なのは細胞のエネルギー源であるATPをつくり出す酵素の働きを助ける役割です。マグネシウムが不足すると、慢性疲労を感じたり、筋肉がけいれんしやすくなるのはもちろん、血管壁が過剰に収縮し、高血圧や狭心症を引き起こすことも。糖尿病になると、尿に糖が出ることによって浸透圧の影響でマグネシウムが多く排出されるため、マグネシウム不足のリスクも高くなります。また、消化管の細胞にマグネシウム不足が生じると、腸管の動きが悪くなって便秘になりがちに。便秘改善薬に酸化マグネシウムが使われるのは、マグネシウムの「ゆるめる」働きを利用しているのです。マグネシウムは、葉緑素のクロロフィルの中心に存在するため、青菜類のほか、あおさ、あおのり、わかめなどの海藻類からとることができます。ナッツ類やチョコレート(ただし、砂糖を含むのでとりすぎに注意)、コーヒーにもマグネシウムが含まれます。推奨量290mg/1日筋肉がつるのは、筋肉をゆるめるマグネシウム不足が原因。青菜や海藻、ナッツをとるとマグネシウム補給に。

 

働きすぎの人ほど消耗する「ビタミンC」

ビタミンCは、私たちの体内で、ストレスに立ち向かおうと常にがんばってくれている栄養素。それゆえ、ストレスを受けると真っ先に消耗されてしまいます。疲れたなぁ、と腰から背中に両手を当てて体を反らすことがありますね。このとき、手のひらが当たる部分に腎臓があります。その上にある小さな臓器が「副腎」です。副腎では、アドレナリンやノルアドレナリンといった、ストレス時に分泌される興奮系のホルモンがつくられていますが、これらホルモンの産生に重要な働きをしているのが、ビタミンCです。働き過ぎ、疲弊するとじんましんが出たり、気管支ぜんそくの症状があらわれたりすることにも、ビタミンC不足が関連すると考えています。また、ビタミンCは目の角膜や水晶体にも多く含まれていますから、目を酷使する人は特にビタミンCをしっかりと補う必要があるのです。ストレスに対抗する以外にも、活性酸素を消去したり、肝臓の解毒酵素の活性化、鉄分などミネラルの吸収促進、免疫力アップなど、ビタミンCは多方面に働きます。人間以外の動物の多くは、ビタミンCを体内でつくり出すことができます。しかし、霊長類はビタミンCをつくる酵素を持たないため、食品からビタミンCを定期的に補充する必要があります。人間と同じ、霊長類のゴリラは、せっせと木の葉を食べていますが、彼らの食べる木の葉に含まれるビタミンCの総量は、体重換算すると、成人が食べた場合1日あたり5g(5000mg)に相当するといわれます。ビタミンCはコラーゲン繊維をつくるときに欠かせないため、肌の張りを保ちたいときには、ビタミンCとともに、魚のにこごり、魚の皮、鶏の手羽などコラーゲンたっぷりの食品をとるといいでしょう。疲労を強く感じるときは、サプリを就寝前に2~3g服用すると、翌朝すっきりと目覚めることができ、視界もクリアになってくるでしょう。推奨量100mg/1日副腎と目に多く含まれ、働き過ぎると消耗する。疲労を感じたときは、寝る前に多めに飲むと翌朝すっきり。

 

アレルギーやウイルス感染予防に「ビタミンD」

アトピー性皮膚炎などアレルギー症状に悩む人、骨を強くしたい人にぜひおすすめしたいのが、「ビタミンD」です。ビタミンDは、紫外線に当たると皮膚で合成される栄養素です。また、鮭のほか、サバ、サンマなどの青魚には体内で利用しやすいビタミンD3が豊富に含まれますが、これらの魚の摂取量も現代人は不足しがち。特に女性の場合、紫外線対策を行っている人も多いことから、ビタミンDは常に不足気味だと考えられます。ビタミンDは腸管からのカルシウムの吸収を助け、造骨作用を発揮します。このことから小児期には必須のビタミンですが、乳幼児期や小児期にビタミンD不足になると、免疫力の低下を招き、アトピー性皮膚炎にかかりやすいことがわかっています。また、ビタミンDをサプリメントとして小児に補充すると、インフルエンザの感染率が低下したことが国内の研究によって報告されています。夏に海水浴で日焼けをしっかりすると冬に風邪を引かなくなる、と古くからいわれていることは科学的根拠があったといえます。ビタミンDを体内でしっかりつくるために、日の光には適度に当たることをおすすめします。また、ビタミンDの最新研究において注目すべきは、さまざまながんの発症を抑制する、ということ。ビタミンDの血中濃度が低いほど、大腸がんや乳がんの発症率が増えることが報告されています。これはビタミンDが免疫力の調整役として働いているため。大人のアトピー性皮膚炎の症状も、ビタミンDの投与によって軽減できることが多いのも、免疫を正常化するためだと考えています。さらに、ビタミンDにはうつ病を予防する効果も。また、妊娠・出産を考える女性にはぜひ知ってもらいたいこととして、母体のビタミンD濃度が低いと、生まれてくる乳児に様々な疾患が起こりやすいという事実があります。摂取目安量1000~5000IU(25~120)/1日アトピー性皮膚炎、インフルエンザ感染予防にも。免疫の調整役としても活躍。大腸がんや乳がんリスクを下げる

 

腸内環境改善に、プロバイオティクス

あなたは、腸とは自分にとってどんな存在だと思いますか?体にとって不要なものを排泄する臓器……そのような理解だとしたら、もっと腸の重要性に気づいてほしいと思います。口に入れるものは、腸で吸収されてはじめて効果が現れます。栄養素をとるときにも、有害なものを排出するためにも、「いかに腸の状態を良くしておくか」が大切なのです。腸内には、腸の内壁を覆うようにたくさんの腸内細菌が生息しています。その数は、約500種類以上、総数で100兆個以上とも考えられ、腸内細菌の重量は1~1・5キロを超えるほど。また、精神安定に不可欠なセロトニンは、脳だけでなく腸でもつくられ、体内のセロトニンの8割は腸にあるともいわれます。下痢や便秘など、お通じの調子がいま一つ、そのせいか心もうつうつする、といった人は、腸内環境を改善しましょう。腸内環境を良くするには、腸内の善玉菌を増やす必要があります。しかし、肉食に偏った食生活やストレス、抗生物質などにより悪玉菌の勢力が優性になると、腸内環境が悪くなります。加齢によっても、腸内の善玉菌は減っていきます。腸内環境改善のためには、乳酸菌に代表される生きた微生物「プロバイオティクス」をとることが効果的。ヨーグルト、漬け物、みそなどの発酵食品を積極的にとりましょう。胃酸によって死滅しないよう工夫されたサプリメントもあります。あわせて、善玉菌のえさとなるオリゴ糖、善玉菌のすみかとなる食物繊維もたっぷりと補うことが必要です。野菜や豆類、果物をとることに加え、ご飯に水溶性食物繊維が豊富な大麦を混ぜるのもおすすめです。また、水溶性食物繊維であるサイリウム(オオバコの種皮)は、過敏性腸症候群の治療薬としても用いられたり、がん治療において免疫力を高めることも確認されています。栄養素の吸収、有害物質の排出をスムーズにするには、腸が健康であることが大前提。腸の善玉菌を増やそう。

 

元気を出したい人、運動習慣のある人は抗酸化サプリ

疲労感が強い、だるい、あちこちの痛みがある、口が渇く、冷える、消化器の調子が悪い、食べる量が変わらないのに太ってきた……。このような不調はすべて、「エネルギー不足」によって起こっていると考えられます。エネルギー不足とは、細胞内のエネルギー工場である「ミトコンドリア」の働きが低下しているサイン。そこに関わるのが、活性酸素です。活性酸素とは、不安定な状態の酸素のこと。過剰に発生すると老化を進め、病気の原因にもなります。活性酸素が細胞を酸化させると細胞が「サビる」、このためミトコンドリアの働きも低下し、エネルギー不足が起きます。また、糖質をとりすぎる人はそれだけでミトコンドリアの機能が落ちて、疲れやすくなります。活性酸素が生じやすいのは、ストレスを感じることが多い人、インスタント食品をよく食べる人、野菜や果物不足の人、お酒をよく飲む人など。また、激しい運動をする人も体内で活性酸素が増えやすいことがわかっています。体内の抗酸化物質が減少する40歳以降の人も、抗酸化サプリをとることを習慣にしたいもの。抗酸化物質の代表選手は、ビタミンC、A、βカロチン、ビタミンEなど。コエンザイムQ10、αリポ酸、カルニチンは、ミトコンドリアの栄養源となり、エネルギー産生を高めます。また、コーヒーのクロロゲン酸、大豆のイソフラボン、ブルーベリーのアントシアニン、ブドウのレスベラトロールなどは植物が自らを紫外線による酸化ストレスから守るためにつくり出したポリフェノールの仲間。いろいろな色の野菜や果物を毎日たっぷりとることによって補うことができます。抗酸化物質を補うと、体内の炎症を防いだり、遺伝子が傷付くのを抑えられるため、長い目で見るとがん予防にもつながります。疲れやすくなった、太りやすくなったときは「抗酸化サプリ」!エネルギー産生を高めて、「元気」を実感できる。

 

頭脳労働の人に、ビタミンB群

甘い物が好きな人、仕事であれこれ頭を使うことが多い人、疲労感が強い人は、ビタミンB群摂取を強くおすすめします。ビタミンB群は、糖質、脂質、タンパク質をエネルギーに変える際に欠かせない栄養素。不足すると、エネルギーを生み出しにくくなり、疲労がたまる原因となります。疲労回復や活力アップをうたう栄養ドリンクのほか、肌荒れやにきび、口内炎対策のビタミン剤などに配合されているので、女性にとっては身近なビタミンかもしれません。特に、糖質をエネルギーに変えるときに欠かせないのがビタミンB1ですが、玄米はビタミンB1を含んでいるものの、精白するとほとんどなくなってしまいます。いっぽう、B2は、脂肪を分解してエネルギーにする役割が。B6はタンパク質を分解し、筋肉などを合成する際に欠かせません。ビタミンB群は脳や神経の働きにも重要です。脳が働くエネルギー源となる糖を分解するのは、ビタミンB1の役割。さらに脳からの情報を神経に伝えるプロセスにおいて、B群は神経の働きを正常化したり、傷んだ神経を修復したり、情報伝達物質の合成を助けるなど縦横無尽に働きます。頭脳労働をがっつりした後には、ビタミンB群が不足状態になっていると理解してください。ましてや、チョコレートなど甘い物がそばにないと集中できない、という人は、糖の代謝にビタミンB群が消費され、慢性的なビタミンB群不足の可能性があります。疲れやだるさ、肌荒れや口内炎が気になったときは、B群を補うことによってスムーズな回復が期待できるでしょう。ビタミンB群はそれぞれが独自の役割を担っていて、チーム全員がそろって助け合うことによって効果を発揮します。サプリメントではビタミンB群を包括的に含有している「ビタミンBコンプレックス」を選ぶとよいでしょう。甘い物の分解、頭脳労働で消費されるのが、ビタミンB。仕事中に甘い物が欲しくなるのは、慢性的なB不足の可能性が大!

 

サプリの飲み方私の場合

私は常時、7~8種類のサプリメントを飲んでいます。基本的に、自分が飲んで効果を実感したものしか患者さんにはおすすめしないことにしているので、研究材料としても、常にサプリメントを試しています。現在飲んでいるものをご紹介しましょう。「マルチビタミン・ミネラル」ビタミン11種類、ミネラル7種類。「ルンブルキナーゼ」ミミズの体内の血栓溶解酵素、ビタミンB6、12、葉酸配合。「アポラクトフェリン」腸内環境を整える。「ビタミンC」抗酸化サプリ。「ビタミンD」免疫、動脈硬化予防、骨の健康、うつ予防、認知機能向上に。「消化酵素」(商品名酵母プラス)消化・吸収、腸内環境を整える。「魚油(DHA、EPA)」血管・脳のアンチエイジング。これらはすべて、自分の生活と体調に合わせて必要と思われるものを、栄養学的な根拠に基づいて選んだものです。現在、このサプリによる体調管理で、精神的にも肉体的にも問題なく、毎日を快調に過ごすことができています。7、8種類のサプリを厳選。ボトルのままだとかさばるので、サプリケースに小分けにして、オフィスに常備しています。

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